養子縁組の相続はややこしい!妹で妻。孫で子。相続はどうなる?

養子縁組をすると養子が増えます。養子が増えると家族関係が複雑になります。しかも、実子や妹弟も養子にできる?奥さんと兄妹になることも!?養子縁組で複雑になった相続関係の解説をメインに、養子縁組の基礎と実子との違いを簡単に説明します。



養子縁組と養子とは?

養子とは、法律に則った手続きにより子供になった者のことをいいます。養子縁組とはその手続きをいいます。

養子というと血の繋がらない子供という印象がありますが、自分の妹弟や子供を養子にすることもできるため、一概に血の繋がらない子供とは言い切れません。また、自分より年下であれば養子にすることもできるため、一概に子供であるとも言い切れません。79歳のおじいちゃんが78歳の自分の妹を養子にすることもできます。子供という言葉がしっくりこないケースはけっこうあるものです。

今回は「養子」とは何なのか?何ができて何ができないのか、実子との違いを説明しつつ、養子がいた場合の相続についてご説明します。



養子と実子?

まずは、養子とは、法律に則った手続きで親子関係を結んだ者のことを言うんだよということを頭に入れてください。この点、生まれたら自動的に親の子供となる「子」とは区別する必要があります。

子にも嫡出子や非嫡出子、認知という諸問題がありますが、ひとまずそういった難しい問題には踏む込まないことにして、ざっくりと、出生により自動的に子供になる「実子」と違い、養子は法律に則った手続きをして初めて「養子」になるんだよという簡単な覚え方をしてしまいましょう。

養子と実子には同じところもある

実子は出生によって自動的に親と繋がりを持ちます。父親と法的な繋がりを持つ場合は認知という手続きが必要になる場合もありますが、出生により、母親とは手続きを必要とせず繋がりができることは変わりありません。

しかし養子は手続きによって子供になりますので、自動的に養子と養親という繋がりができることはありません。親になる人、子になる人が望んで手続きをする必要があるのです。こうした違いがあることは先項でも説明しました。この点が、同じ「子」という漢字が使われながらも実子と養子の大きな違いではないでしょうか。

しかし、養子と実子には同じところもあります。

養子は手続きをすることによって養親の法律上の正しく子供になりますから、養親が亡くなったら相続をすることができます。また、養親が病気に臥せって働けなくなったら扶養する義務を負います。養親は養子を育てなければいけませんし、同じく扶養しなければいけません。これは実子親子と変わりません。手続きで結ばれた親子関係とはいえ、親子関係になったからにはまさに「親と子」になるのです。

しかし、手続きで親子になったわけですから、全てが出生によって結ばれた親子と同じというわけではありません。親を介護し、子を扶養する。そしてお互いを相続する。この関係は養親子関係でも変わりませんが、相続と税金上、民法の一部で少々異なった扱いをされています。

養子には実子と異なるところもある

養子は手続きで結ばれた親子関係です。基本的に手続きをすると普通の親子と変わらない関係が発生しますが、相続と税金、民法の一部で取り扱いが異なっています。また、「どんな養子か」によっても取り扱いが異なる部分があります。

養子と養親は養子縁組の際に縁組意思を持っていなければいけないと言われています。縁組意思とは、この人と本当に親子になるんだという意思のことです。ですから、家督を継がせたいがために養子縁組や、相続税の控除を増やしたいという理由からの養子縁組は許されないことになります。

本当に自分の子供、家族になるという意思のもとに手続きし、結果的に家督を継ぐ。本当にこの人の子供に、家族になりたいという意思のもとに養子縁組をし、結果的に相続税の控除が増える。控除や家督を継ぐが前提ではなく、養子縁組と縁組意思が根底にあり、結果的にそうなったということでなければいけません。

しかし、養子縁組をする際に嘘発見器にかけるわけにもいきません。実際の気持ちは本人にしか分かりません。ですから、現実として相続問題を解決するための養子縁組はよく行われています。養子縁組をすると、本来は相続権がなかった人も養子という立派な子供の一人として相続することができるようになるからです。また、もともと自分の相続人になるだろう人を相続人にすれば相続時にますます取り分を増やすことができてしまいます。相続対策としては非常に有効な手段なのです。

実子の場合は、子供を産んでから自分の子供にするためにさらに親子関係になるという意思は必要ありませんよね。また、相続対策をしたいからといって子供をたくさん産むというケースも、まったくいないとは言い切れませんが、ほとんどないと思います。実子は根底に意思など必要ありません。産まれれば我が子に違いないのですから。この点も実子と養子の大きな違いではないでしょうか。

実子と養子の違いについて簡単に説明しました。実子と養子には違いがありますが、同じところもあります。また、養子同士にも違うところがあるんです。どんなふうに養子になったかで、養子は二種類に分かれ、同じ養子でも扱いは変わります。

養子と実子の異同まとめ

実子、養子とも、

■親の相続ができる
■親の扶養義務がある

という大まかな共通点を覚えておきましょう。また、

■実子は出生だが、養子は養子縁組手続きにより親子関係が生まれる
■養子の場合は手続きの際に縁組意思が必要
■相続、税金、民法で養子と実子を異なる取り扱いをすることがある

という基礎的なことももう一度頭に入れていただいた上で、「養子」と「養子」、二つの養子の扱いの違いについて考えてみましょう。

養子縁組と養子縁組の違い?

養子には「普通養子」と「特別養子」の二種類の養子が存在します。

この二種類の養子は、親子関係や養子の相続関係を考える上で非常に重要なことですから、簡単な理解でいいのできちんと区別できるようにしましょう。前の項目では養子と実子の異動について書きましたが、ここからは二つの養子と実子を織り交ぜ、三種類の子供の違いについても説明します。どの養子にどんな手続きをするのか、違いがあるのかを押さえる必要があります。

普通養子とは

普通養子とは、比較的簡単な手続きでできる養子縁組です。

養子は自分より若く直系尊属(親や祖父母、曾祖父母など)でなければよく、他には成人していない子供を養子にする場合は裁判所の許可が必要などの要件があります。自分の子供でも非嫡出子である場合は養子縁組をすることもできますし、自分の妹や弟、孫を養子にすることもできます。叔父や叔母が姪や甥を養子にすることもできます。夫婦で同じ人の養子になることも問題ありません。

裁判所|養子縁組許可
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

特別養子とは

特別養子は実の親との関係を完全に断ち切り、養親の「本当の子供であったかのよう」にしてしまう養子縁組です。

本当の子供のようにするわけですから、子供が幼く物事の判断があまりできないうちに養子縁組をしてしまわなければいけないため、子供に年齢の要件が定められています。また、本当の子供として育てるために望ましいといえるため、結婚している夫婦でかつ片方が25歳を超えている場合のみ可能です。25歳という要件があるのは、ある程度年齢を重ねていれば子供の養育に必要な経済力があるだろうという考えからです。

他にも、特別養子は手続きに必ず裁判所が関わります。普通養子より手続きが難しい養子縁組が特別養子です。

裁判所|特別養子縁組成立
参照元:裁判所(2015年12月、著者調べ)

普通養子と特別養子と実子

実子は子供として親の相続人になります。養子も子供ですから養親の相続をすることが可能です。普通養子、特別養子、どちらとも養親の養子として相続人になります。ただし、実親の相続に関しては普通養子と特別養子で扱いが異なります。

普通養子になることにより、養親の子供になります。ただし、養子になっても実親との関係は切れませんので、両親と養親が両方いることになります。養親と両親どちらの相続もすることができます。対し、特別養子は、養親の相続はできますが、実親の相続はできません。実親とは縁が切れる養子縁組方法ですから、縁が切れている人たちの相続をすることができるはずがありません。

相続に関しては基本的に実親か養親かの相続ができますが、実子、普通養子、特別養子、で少し相続関係が変わります。



ややこしい養子縁組の相続

養子は、普通養子であれば養親と実親の相続ができ、特別養子であれば養親の相続ができます。そこに実子が入り混じることで相続関係が複雑になります。言葉面だけを見れば「ああ、なるほど。二つの養子は相続に差があるけど養親の相続ができることは同じなのね」で済みますが、そこに他の立場も加わるとたちまち、取り分ってどうなるの?と頭を抱えることになります。

特にややこしい問題を覚えやすく解説します。

孫であり子の相続

AさんにはBとCという二人の息子がいます。Bには息子D(Aさんにとっては孫)がおりました。Aさんは孫を援助するために養子縁組をしました。これによりAさんはDの祖父でもあり養子でもあることになりました。DにとってAさんはおじいちゃんであり養親でもあります。

そんなある日、Bが突然の事故で亡くなりました。そう時を置かずに、Aさんも亡くなりました。

Aさんの遺産は6,000万円ありました。相続人はCと孫・養子Dです。しかし、そこで困った事態に直面します。Dは孫です。Bが亡くなった後にAさんが亡くなったわけですから、Bが得るはずだった遺産の取り分を代襲相続できる立場です。

同時にDは養子です。法的にはAさんの子供です。こんな時は、Dはどうしたら良いのでしょう?孫としてBの取り分を代襲相続すべきでしょうか。それとも養子として相続するべきでしょうか。あるいは、養子と孫(代襲相続できる)という立場でダブルに相続できてしまうのでしょうか?

答えはダブル相続です。代襲相続できる他に、子供としても相続できます。ですから、取り分は息子Cが1/3で養子兼孫であるDは2/3となります。従って、息子Cは2,000万円を相続し、養子兼孫であるDは4,000万円を相続します。代襲相続できる孫と養子という二つの立場を持っている人間の相続パターンです。

夫婦であり兄妹の相続

こちらも二つの立場を持っている場合の相続パターンです。

夫Aの両親の養子になった妻Bは、Aの妻であり妹でもあるという立場です。ある日、夫Aが急に亡くなり、相続財産として4,000万円を遺しました。養父母である両親は既に亡くなっていますが、夫Aの弟であるCは存命です。AとBの間には子供はいません。

この場合は、養子という立場を考えないなら、妻と兄弟姉妹が相続人になるパターンですから、妻が3/4、弟が1/4を相続することになります。しかし、妻BがAの配偶者であると同時に妹でもあるという事情が相続を複雑にしています。この場合、妻Bの相続の取り分はどのようになるのでしょうか。妻兼妹としてダブルで相続できるのでしょうか?

この場合は、本来の妻の取り分である3/4しか相続できないとされています。従って相続は妻Bが3,000万円で弟が1,000万円となります。先の孫でもあり養子でもあるケースと結論が異なりますので注意が必要です。

No.4132 相続人の範囲と法定相続分|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

税金上の養子と実子の違い

税金上では養子と実子に明確な差が設けられています。相続税の算定の際に含めることのできる人数は、実子の場合は全員です。実子と同じように扱われ元の産みの親と事情あって縁を切っている特別養子も、税金上は実子と同様に全員算定に含めることができます。ただし、普通養子の場合は計算に含めることができるのは二人までと決まっています。

特別養子は元の親とも縁切りし、裁判所に手伝ってもらって本当の親子になるための養子縁組です。ですから、税金上でも実子と同じ扱いというのは頷けます。しかし、普通養子は、要件さえ踏んでいれば何時でもどんどん増やすことができます。78歳のおじいちゃんが相続のことを考えて77歳と75歳と71歳の息子を養子として迎えるなんてことも有り得ます。

税金逃れができないように、普通養子は養親の実子を養子にしたケースを除き基本的に二人までしか計算に含めることができないと定められているのです。

No.4170 相続人の中に養子がいるとき|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月、著者調べ)

まとめ

二種類の養子縁組に実子を交え、主に相続を中心でそれぞれの違いを説明しました。

普通養子、特別養子、実子、全て親と子という関係が発生することに変わりはありません。しかし、養子は手続きにより結ばれた親子関係であり、実子は出生により結ばれた親子関係であるという違いがありました。法的には同じ親子ではあるのですが、「手続き」と「出生」により扱いにはやはりどうしても差が生まれてしまいます。

親子ですからお互いに扶養する義務があるのは変わりませんが、相続、税金、民法上の扱いの中で、特に差がありました。差というよりも、手続きによって生まれてしまうやっかいな関係により、相続関係や親子関係が微妙に変化すると説明した方が適切でしょうか。

養子は基本的に養親の相続が可能です。子供として相続人となります。しかし、おじいちゃんが孫を養子にした場合、子供でもあり孫でもあるという複雑な関係が生じてしまいます。また、おじいちゃんが自分の息子の妻を養子にすると、夫婦でありながら兄妹という複雑な関係が生じてしまいます。これらは当然ですが相続の取り分に大きく影響します。

税金の取り扱いも異なりましたし、同じ養子でも普通養子と特別養子では相続の面での違いもありました。

養子縁組は手続きで生まれる親子関係です。手続きによってなったものであっても親子には違いないのですが、手続きでできてしまうゆえに特に相続関係が複雑になることを考えなければいけません。

養子縁組をする場合は相続にどのように影響を与えるかを考えて手続きをとることをお勧めします。 ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。