住宅ローン返済は繰上げする?しない?自分に合った選び方とは?

頭痛のタネになりがちな、住宅ローンの繰り上げ返済。繰り上げ返済した方がいいってみんな言うけど、本当にそうなの?それとも貯蓄を増やしたほうがいい?誰か教えて!というあなたに捧げる参考書です。



住宅ローンを繰り上げ返済をする理由は?

この記事に興味を示された方の中には、新築の家に引っ越してとっても嬉しい気持ちと、これから何十年も住宅ローンを支払わなくてはいけない重圧感との狭間にいるといった方も多いのではないでしょうか。

なるべく利息は払いたくないから、やっぱり繰り上げ返済を頑張らないと!と思いつつも増えない貯蓄額にため息も…。繰り上げ返済はするべきなのか?貯蓄にまわすべきなのか?あなたのこれからの住宅ローンとの付き合い方を考える材料になるであろういくつかの事をご説明したいと思います。

繰り上げ返済のメリットは何と言っても

繰り上げ返済の最大のメリットはやはり、利息の軽減でしょう。誰だって無駄な利息は支払いたくはありませんよね。毎月の利息の計算の仕方はご存知でしょうか?簡単にご説明します。

例えば、3,000万円を2%元利均等返済で35年のローンを組んだとします。毎月の利息の計算方法を下記の式に当てはめて計算しますとこのようになります。

■毎月の利息額=前月借入残高×利息/12ヶ月

●項目/一ヶ月目/二ヶ月目
・返済額:99,378円/99,378円
・利息額:50,000円/49,918円
・元金:49,378円/49,460円
・借入残高:29,950,622円/29,901,162円

従いまして、利息の額を大きくするか小さくするかは前月の借入残高に大きく影響するわけです。しかも、繰り上げ返済で支払うお金は毎月のローンの返済と違い、全て元金に当てられます。自ずと利息の額を小さくする効果が通常のローン返済より大きく働くというわけです。

これは最大の繰り上げ返済のメリットです。これを聞くとますます、やはり繰り上げ返済は出来るだけしないといけない!という気持ちになってしまいそうですね。

それでは次に住宅ローン減税との関係も見ていきましょう。

住宅ローン減税効果に影響あり?

住宅ローン減税は、ある一定の条件を満たす住宅の取得者に対して金利の負担軽減を目的として、毎年末の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が10年間に渡り所得税の額から控除される制度のことです。10年間の最大控除額は400万円。従いまして、1年では40万円となります。

また、所得税から控除しきれなかった分に関して、住民税から控除することになっています。因みに、住民税から控除できる金額の上限は13.65万円/年です。

もし繰り上げ返済をすれば借入残高が減るわけですから、住宅ローン控除の恩恵効果が薄れるということにはなります。

これからご紹介する試算は簡単なものですので、実際の計算は少し複雑ですので差異があるものとしてご覧いただきたく、ご注意ください。

例えば先ほどの例でいいますと、3,000万円を2%で元利均等35年のローンを組んでいる場合で、購入月を11月だと仮定しましょう。年末がやってきます。すると年末の借入残高が29,901,162円ですので、その1%の299,011円が所得税や住民税から控除されて手元に残ります。

住宅ローン返済生活2年目の11月に、200万円の繰り上げ返済をしたとします。すると2年たった年末の借入残高は26,708,626円となり、その1%の267,086円が税金から控除されます。

もし繰り上げ返済をしなかった場合の借入残高は、28,708,626円で、住宅ローン控除を受けられる額は287,086円です。その差は20,000円。200万円の残高が減額されたわけですからその1%分の税金控除がなくなるわけです。

しかし200万円を繰り上げ返済しないで残りの34年間借り続けた場合と、繰り上げ返済した場合では、総返済金額は1,801,871円も変わってくるのです。

金額だけ見ますと、比べるまでもないほどの差がついていますね。繰り上げ返済はやはり総返済金額すなわち無駄な利息を減らすためには、大変有効だと言えそうです。

住宅ローンを取り扱う金融機関等のHPでは、繰り上げ返済のシミュレーションを掲載していますので一度ご自身でシミュレーションをされてみてはいかがでしょうか。

住宅ローン減税制度の概要|すまい給付金
参照元:国土交通省(2015年12月、著者調べ)

住宅ローン 一部繰上返済シミュレーション【入力】 : 三井住友銀行
参照元:三井住友銀行(2015年12月、著者調べ)

早く完済してスッキリしたい!

繰り上げ返済を考えている方の中には、もちろん無駄な利息の支払いをなるべく減らしたいという思いのほかに、収入減が見込まれる定年前までに完済したいをいう理由も多くあるかと思います。

勿論それはとても大切な事だと思います。再雇用契約があるのかどうか、年金はいつからもらえるのか、はたまた年金そのものを受給できるのかどうか、先行きが見えないこの状況で定年後までローンを引きずるのは大変危険です。最低、定年前までにはローンは完済できるように、もともとの借入期間が定年後の設定になっている方は、繰り上げ返済の必要があるでしょう。

また、変動金利の上昇が怖い、少しでも早く完済して金利上昇リスクを減らしたい、とお考えの方もおられるでしょう。それもごもっともです。変動金利の上昇に対する最大のリスクヘッジは繰り上げ返済と言っても過言ではありません。早い段階で元金を減らしておけば、もし金利が上昇しても元金が少なくなっている分、負担も軽くなるからです。

ちなみにですが、万が一金利が上がった場合その負担が大きすぎて生活が苦しくなるくらいであるのなら、その住宅ローンの設定は最初から無理があるということです。



繰り上げ返済をする際の注意点

やみくもな繰り上げ返済は危険!

さて、ここまで繰り上げ返済のメリットをたくさん挙げてきましたが、突然ですが逆のことを申し上げます。

やみくもな繰り上げ返済はかえって危険です。

なぜ危険かと言いますと、とにかく繰り上げ返済しなくちゃ!と躍起になってしまい、まとまったお金ができたらすぐにそれをローン返済にまわしていると、貯蓄が増えませんね。

万が一のお話ですが、もし明日、ローン契約者が不慮の事故にあったり病気になったり、はたまた会社が倒産となってしまったらと考えたことはありますか?もし最悪の事態でこの世を去るということになれば、団信に入っていれば住宅ローンはチャラになります。それが3,000万円だろうが、一生懸命繰り上げ返済をして残高を減らした1,000万円だろうが残高が0になるという結果は一緒です。

しかしながら、繰り上げ返済をして手元の貯金が0円の場合と、繰り上げ返済をせず手元に2,000万円ある場合とでは、残された家族の安心感は比べようもありませんね。

病気や倒産にしたって同じです。一時的にローン契約者が働けなくなった場合、収入が無くても家族が生活できる貯蓄があれば問題ありません。しかしながら手元に現金がなければ生活ができなくなり、せっかく繰り上げ返済してきた住宅さえも手放さなければならなくなるのです。

リスクのない人生はありませんから、それに備える必要があります。リスクヘッジをしながらの、繰り上げ返済を心掛ける必要があるでしょう。

最も低金利商品である住宅ローン

借入金の金利として住宅ローンの金利は、最低のラインを推移しています。こんな低金利で借入れできる商品は他にないといってもいいくらいです。とはいえ、貯蓄していたって受け取れる利息は借り入れ利息よりも少ないのだから、やっぱり繰り上げ返済に回した方がお得だ!という方もおられるでしょう。その二つを比べて損得を勘定すればそのような結果になるでしょう。

しかし、低金利で借りられているのだからこそ敢えて返済を急がず、手元にお金を置いておくなり、投資をして支払利息以上の利回りで運用するのも一つの方法だと思います。投資なんて怖い…という方は、専門家にまかせる積立投資信託がいいかもしれませんよ。投資ですから元本割れの可能性はありますが、長くじっくり資産を増やすには向いている商品です。

ライフプランと貯蓄の関係

さて、人生には何度か大きなお金が必要となるイベントがあります。結婚、住宅購入、出産、子供の教育費、そして老後です。これらに共通して言えることは、貯金をして備える必要がある、ということです。

イベントの順番やあるなしは人それぞれですが、もしお子さんがいる家庭であればか教育費はとても重要です。家庭の貯蓄とは別に、これからお子さんにかかる教育費を考えなければいけません。目的以外に絶対に使ってはいけないお金として、貯金なり積立保険なりをする必要があります。

文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までオール公立で500万円、オール私立で1,677万円だそうです。ちなみにこの数字は学費だけではなく、学習外活動費として習い事や学習机の購入なども含まれています。

そして近年は大学全入時代と言われています。この先にある大学の学費として、もっとも高額な教育資金が必要です。日本政策金融公庫の調べによると、一年間の在学費用として、公立大学で約107万円、私立理系学部で約169万円かかるそうです。

安い金額では決してありません。子供が生まれた時からコツコツ貯金をする必要があります。そのお金をも繰り上げ返済に回してしまうのは、将来の教育資金がショートし、新たにもっと高い教育ローンを組む羽目になるか、お子さんに進学を諦めてもらうなんてことにもなりかねません。

また、老後の資金についても、巷では2000万円必要だ、いや3,000万円必要だといわれていますが、この金額を準備しようと思って一朝一夕で出来るものではありません。若いころからの地道な貯金が必要です。これこそ今すぐ必要なお金ではありませんから、長い目で投資しながら資産を増やす方法が向いていると思います。

平成24年度子供の学習費調査:文部科学省
参照元:文部科学省(2015年12月、著者調べ)

日本政策金融公庫
参照元:日本政策金融公庫(2015年12月、著者調べ)

自分にあった繰り上げ返済の方法とは?

さて、ここまで繰り上げ返済のメリットと注意点を述べてきました。つまりは、繰り上げ返済も貯金も大事だということです。ではいくらほど貯金があれば、繰り上げ返済を考えてもいいと言えるのでしょうか?金額別に考えてみましょう。生活は十人十色ですので、一概に金額で言いきることはできませんが、目安として見て頂ければと思います。

貯蓄が100万円以下の場合

もし、現在貯蓄が100万円以下の場合、どんな家庭状況であっても繰り上げ返済は見送られた方がいいでしょう。まずは、家族が最低でも1年は暮らしていける程度の貯金は必要です。それが用意できてから、繰り上げ返済を考えるのが良いでしょう。

まずは300万を目指しましょう。お子さんがいないという家庭であればそれを超えた時点から無理のない程度の繰り上げ返済を考えてもいいかもしれません。しかしながら、繰り上げ返済に手数料がかかる場合もありますので、ご自分の住宅ローンの契約をお確かめください。

貯蓄が300万円程度の場合

もし、現在貯蓄が300万円程度の場合、お子さんがいるご家庭はまだ繰り上げ返済はリスクがあると考えます。もしローン契約者に何かあっても300万円の貯金と、配偶者の収入で当面の生活に問題はないと言い切れる方は、繰り上げ返済を考えても良いかもしれません。あくまでも無理のない範囲で、ですが。

著者の感覚では300万円の貯蓄では、まだリスクも将来への備えも不十分だと思います。ですが、まだ貯金が十分でないときでも、住宅ローン減税で控除された金額を、その額だけと決めて繰上げ返済をするというのは、貯蓄を減らすわけでもありませんのでとても賢い方法だと思います。

貯蓄が500以上の場合

もし現在貯蓄が、500万円以上あるという場合は、繰り上げ返済を考えてもいいかもしれません。ただしお子さんがたくさんおられる、1年の生活費を500万円では賄えないなどという方はまだまだ余裕の繰り上げ返済とはいきません。

家族の1年の生活費、お子さんの教育費の積み立て、及び老後の資金の積み立てが順調に進んでいるという方は、繰り上げ返済を考えてもいいでしょう。



まとめ

住宅ローン返済と上手に付き合う

さて、ここまで見てきましたが繰上げ返済が、総支払額で考える損得の上では大変有効な手段であるということは、わかっていただけたと思います。しかしながら長い人生全体を考えた場合、やみくもな繰り延べ返済が住宅そのものを手放さなくてはならなくなるような最悪の事態を招く一つの原因になり得るものだということも、お分かり頂けたかと思います。

要するに、繰上げ返済を含む住宅ローンと上手く付き合っていく必要があるということです。繰上げ返済はリスクヘッジです。しかしまた、貯蓄も大切なリスクヘッジです。それらを上手にやりこなしながら完済を目指すことが、何よりの安全道なのです。

一度、ライフプランを考え資金計画を考えてみませんか。そうすればあなたの貯蓄計画と繰り上げ返済計画も自ずと見えてくると思います。この記事が、あなたが住宅ローンと上手に付き合うきっかけになりますように。