【年金が払えない】差し押さえは本当にある?免除の手続きは?

「年金が払えない」そんな思いで不安を抱えて立ち止っていませんか?年金機構からの通知を放置していませんか?「払えない人と払わない人」は別です。強制徴収、つまり差し押さえをされるのは「払わない人」です。「払えない人」には免除・猶予という手があります。「年金を払えない人」がどうしたらいいのかについてわかりやすくまとめました。



年金を払えないとき

不安なのはあなただけではありません

事情があって「年金を払えない」状況になった場合、不安に思うのは自然なことです。「どうしよう、捻出できない、どうなるのだろう。」と思うもののない袖は振れませんよね。

収入が低くて無理、無職になってしまい無理、怪我や障害を負ってしまい無理、など事情も様々。

落ち着いて「払えない、ではどうしたらいいのだろうか。何かするべきことはして、今後どうしたらいいのかを知っておきたい。」と考えましょう。

まず、国民年金をどれくらいの人が納めている、あるいは納めていないかを御存知ですか?納めている人の割合ですが、厚生労働省が発表している数値によると平成26年4月分で51.8%、平成25年度分で61.6%、平成24年度分で63.9%です。後から遡って納めることができますから数値が今後変わることはあるものの、平成26年7月に発表されたのがこの数値ということです。

しかも、免除・猶予されている人を計算に入れると実質納めているのは4割ほどとなるようです。

同じように払えない人が沢山いるということですね。冷静になって「ではどうしたらいいのだろうか」について考えていきましょう。

国民年金保険料の納付率
参照元:厚生労働省(2015年12月時点、著者調べ)

国民年金納付率63%に改善 14年度、実質は40%で横ばい  :日本経済新聞
参照元:日本経済新聞(2015年12月時点、著者調べ)

実は多い滞納者

年金保険料に関し、滞納者が多いという問題があります。そのため、厚生労働省はこの問題を解決するために年々強制徴収を強化してきています。2010年から国税庁への委任まで始まっているのです。

ここで大事なのは、「この強制徴収の対象者は払えるのに払わない人」ということです。具体的には控除後所得額が400万円以上の人などです。財産調査や差し押さえも現実に行われています。

調査では所得400万円以上の人の他、所得1,000万円以上の滞納者についても統計をとっています。都道府県別の件数も調査、公開されています。

「国民年金保険料の強制徴収の集中取組」の結果について
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

「払わない」のでなく「払えない」のだから

しっかり分けて考えなければならないこととして、「払わない人」と「払えない人」は別ということです。払えない人の場合は免除・猶予という手段をとることができます。

また、年金の後納制度(遡って後から納める)を利用することにより、将来もらえる年金額に影響の出ないようにすることもある程度可能です。どのくらいの年数を遡ることができるのかも含め、続いてご紹介していきましょう。



未納のままにしないという選択

免除は可能?未納より免除の選択を!

まず、「将来年金をもらうためには25年分払っていなければならない」ということを知っておきましょう。老齢基礎年金というものですが、その受給の条件です。

もちろん、20歳から60歳まで40年間納めれば満額もらえるものの、年数が減れば受給額も減ります。しかし、大事なのは「少なくなるとしてももらうために25年は必要」ということ。

そして、「失業期間が長くて無理」「世帯収入が低すぎて無理」という方などにとって大事なこととして「免除期間」もこの25年の中に合算して入れてもらえるという事実です!

ですから、払えないのであれば「未納」のままにせず「免除」の手続きをしておくことがとても大事です。「今払わなくて済む」だけの問題ではありません。(もちろんきちんと払った人よりは少ないものの)将来年金をもらえるかどうかに関わる大事なところです。

そして「自分は大丈夫だろう」と思いがちですが、障害や死亡といった不慮の事態が発生したときにも大変な影響があります。未納にしておくことで障害基礎年金・遺族基礎年金をもらえないかもしれません。「未納」は本当に危険な状態と言えますから放置は厳禁です。

なお、20歳から30歳未満の人の場合、「免除」ではなく「猶予」という制度を利用することになります。若年者納付猶予制度です。20代など若い人は親の所得があることで「免除」を受けられないことがあり、免除の代わりにできた制度です。免除と同じく「将来年金をもらうために必要な期間」に合算してもらえるので「未納」にしておくのではなく「猶予」にしておくのが正しい判断です。しかし免除と異なることとして「年金受給額は全く増えない」ので、後納するなどして対策しましょう。

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

年金の受給(老齢年金)|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

全額?半額?一部?

「年金が払えない」という人でも、状況は様々ですよね。「少しなら払える」「半額程度なら」「全額無理」とそれぞれの人がいるように、免除となる割合もしっかり分けて定められています。ご紹介しましょう。支給割合が2通りですが「ある程度の割合で受給できる」と覚えておけば良いでしょう。

●全額免除の場合
・平成21年4月分からの分:全額納付した場合の年金額の2分の1支給
・平成21年3月分までの分:全額納付した場合の年金額の3分の1支給
●4分の3免除の場合
・平成21年4月分からの分:全額納付した場合の年金額の5/8支給
・平成21年3月分までの分:全額納付した場合の年金額の1/2支給
●半額免除の場合
・平成21年4月分からの分:全額納付した場合の年金額の6/8支給
・平成21年3月分までの分:全額納付した場合の年金額の2/3支給
●4分の1免除の場合
・平成21年4月分からの分:全額納付した場合の年金額の7/8支給
・平成21年3月分までの分:全額納付した場合の年金額の5/6支給

いかがですか?年金制度が弱者に優しいことを感じるのではないでしょうか?ですから、「未納」ではなく「免除」にすることが大事なのです。

そして、払えるようになったときにきちんと払うことにして「将来堂々と年金を受給すればいい」のではないでしょうか。

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

免除の所得基準

「免除」の割合がどれくらいかになるかは所得基準で決められています。例えば一人暮らし(扶養家族なし)だったら全額免除になるのは所得57万円以下など。ここで「所得」と「収入」に違いがあることも話しておく必要がありますね。所得57万円ということは給与収入で考えたときに122万円となります。収入から必要経費などを引く計算が行われ、所得額が決められるためです。収入180万円以下の場合、一律65万円が引かれます。

この金額に対し、扶養親族の数が増えると人数分だけ35万円プラスとなります。ですから、夫婦、あるいは親一人を扶養している世帯で収入157万円(所得額では92万円)以下、夫婦と子供一人の世帯の場合は収入192万円(所得額では127万円)以下と基準額が上がっていきます。

全額免除の基準額を超えていても、ある基準額以下であれば一定額の免除に該当する場合があります。前年所得と計算式(扶養家族の数や社会保険料控除額などを考慮)で割り出します。

4分の3免除の場合、半額免除の場合、4分の1免除の場合においてそれぞれ78万円、118万円、158万円と決められた金額に対し扶養親族等の控除額、社会保険料控除額等が加算され、基準額が決まります。「所得がこの基準額以下であれば該当」となります。

実際に「払えない」状況なのですから、年金事務所に問い合わせて該当するかどうかを聞いてみてもいいでしょう。そして該当するようなら自治体に申請すればいいわけです。

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

No.1410 給与所得控除|税について調べる|国税庁
参照元:国税庁(2015年12月時点、著者調べ)

復職して働けるようになったらまた手続きが必要?

基本的に「免除・猶予」申請は毎年行うことになっています。ただし、申請の際に「翌年度以降も申請する」ことがわかっているなら、あらかじめ書類に印をつけておくことでそのまま継続申請するものとして扱ってくれます。

申請は「前年度の所得」に基づいて行いますから、前年所得が決まる6月に申請、免除期間が7月から翌年6月になるパターンが一般的となるようです。ですから他の月に申請したとしても「免除」の承認期間が6月までとなるかもしれませんね。働けるようになったとしても「次の免除申請をやめれば」大丈夫ということになります。そして余裕ができたなら「遡って」払うこととし、将来もらえる年金の額を少しでも増やしたいですね。

国民年金保険料の免除申請お済ですか? – 足利市公式ホームページ
参照元:足利市(2015年12月時点、著者調べ)

保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

滞納で怖いのが差し押さえ

本当にあるの?

あります。ありますが、「払えない人ではなく払わない人に対する強制徴収」です。参考までにご紹介すると、「度重なる納付の勧めによっても未納とした人」に対して送付した最終催告状の発行件数は平成24年度に約7万件もありました。平成23年度は約3万件でしたから「強制徴収」が厳格化されるのも仕方がないことですね。

みんなの未来のために
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

差し押さえの対象は?

強制徴収されるのは「財産」ですから、口座の預貯金の他、車なども対象です。ある滞納事業所の事例では営業用の車の他、店内の商品も差し押さえられています。具体的には車に「ダイヤロック」をかけます。本当に「差し押さえ」なんだな、と感じることでしょう。

差し押さえ件数は平成24年度で約2.2万件、平成23年度の1.7万件と比べても増えていることがわかります。

繰り返して念を押しますが、これは「払えるのに払わない人に対して」の強制徴収です。

みんなの未来のために
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

差し押さえを回避するには?

「未納」のままにしておかず「免除・猶予」の制度を利用することです。

「払えない人」に強制徴収は関係ありません。



活用したい後納制度

遡れるのは何年?

「将来の年金額を増やすために」遡って年金を納めたいと思う場合があるでしょう。あるいは、「一年二年は払えない状況が続くかもしれない、後で遡って納めることはできるだろうか。」、「結婚する予定の相手が年金をちゃんと納めていないことが発覚!何年遡ることができるのかを知りたい」など多くの人が気にする問題です。

その答えは、ズバリ「5年」です。平成27年10月から平成30年9月までの3年間限定なのですが、5年分なら遡って納めることができます。残念なことに、平成27年9月まで10年遡れる制度もあったのですが、それは終了してしまいました。しかし、5年だけでも遡って納めることができる「後納制度」はぜひ利用したいですね。

国民年金保険料の後納制度|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

受け取れる年金にどのくらいの差が?

「遡れる」ということは「その当時に払っていたのと同じ扱いになる」ということです。

平成27年度の年金の満額で簡単に計算して考えてみましょう。平成27年度では780,100円が満額の老齢基礎年金となっています。これは40年しっかり払った人の金額です。つまり、40×12カ月払っていますから

●781,000円/40×12=1,627円

となり、1か月分後納することでもらえる年金額が年間で1,627円増える計算になります。2年分遡って納めると39,048円増額、5年分遡って納めると97,620円増額です。

誰でもどのくらい長生きするかわかりません。そして、国民年金はそもそも満額でさえ781,000円しか(平成27年度の場合)ないのですから、遡って増やしておけるなら増やしておきたいと思うものです。

そのため、後納制度を積極的に活用する人も多くいます。

老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)

対処を知って必要な手続きを

いかがでしたか?「国民年金保険料のお知らせ」という催告状が届き、中を見たら「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)」とのことだった。「どうしよう」と慌てている。そのような場合は催告状にもあるように「免除申請手続きの案内」を委託している連絡先に冷静に問い合わせてみましょう。

怖いのは「払わない人に対する強制徴収」です。「払えない人」であれば免除制度が利用できますから、「どの程度免除してもらえるのか」を確認しましょう。

そして、払えるようになったときには「後納制度」を利用して「将来もらえる年金額を増額」しておきたいですね。

年金制度は「弱者に優しい制度」です。そのために破たんの危機となっている側面もありますが、制度のことは国に任せ、必要な手続きをすることによって「未納のままにしない」ことだけはきちんとしておきましょう。

*本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。

国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)表面
参照元:日本年金機構(2015年12月時点、著者調べ)