【年金受給の繰り下げ】得なの?損なの?真実を徹底調査!

現在、年金の受給開始年齢は65歳とされています。この受給開始を繰り下げることができます。繰り下げたらどうなるのか?通常の開始年齢からもらうより得なのか損なのか徹底調査をしてみました!



老後の資金はいくらいるの?

老後の生活費はこれ!

まずは老後の生活費がどれくらいかかってくるのかをということを調べました。生命保険文化センターによると老後の生活をするのに、通常の生活で月に【約22万円】と必要と言われています。また、少し裕福な生活がしたいなという場合は【約35万円】が必要だそうです。

定年退職を60歳で迎えた場合、ゆとりのある生活の月35万円の生活を85歳までの20年間続けたとすると、1億500万円もの老後資金がいることになります。

1億という数字を見るとぞっとする金額かもしれません。しかし、これを全部貯める必要はありません。

「生活保障に関する調査」|公益財団法人 生命保険文化センター
参照元:生命保険文化センター (2015年12月著者調べ)

退職金と年金

公的な年金以外に準備しておくべき老後資金はおよそ3,000万円と言われています。3,000万円も貯金するにはそう簡単な金額ではないでしょう。しかし、上記であげた老後に必要な資金の1億円から考えると肩の荷が降りたような気持になるのではないでしょうか。

また、夫が会社員で定年まで働いた場合には退職金が出る場合があります。退職金はどれぐらいでるのでしょうか。厚生労働省が発表した、平成25年就労条件総合調査結果によると、
◆大卒の退職金:2156万円
◆高卒の退職金:1965万円
が、平成24年の給付額とされています。(勤続年数35年以上の定年退職者)
もちろん妻も定年まで働いた場合には単純に考えれば2倍入ってくることになります。

大体約2,000万円が給付されると考えると老後資金として準備するのは1,000万円くらいになるでしょう。そう考えると老後の資金も貯められそうな気がしてきますね。しかし、この退職金の金額が必ず約束されたわけではないので注意が必要です。

平成25年就労条件総合調査結果の概況|厚生労働省
参照元:厚生労働省 (2015年12月 著者調べ)

退職金はいくらもらえる?退職金の平均相場 [定年・退職のお金] All About
退職金っていくらもらえるのでしょうか。厚生労働省や日本経団連などの調査データから2014年の退職金相場をご紹介します。企業規模、学歴、職種だけでなく、退職金の給付方法によっても大きな差があります。



年金受給の繰り下げ

年金の基本

まずは通常の年金がいくらもらえるのかを確認しておきましょう。平成27年現在、【国民年金】は老齢基礎年金として、年間【780,100円】が給付されています。これは免除期間や未納がない場合の金額です。支払っていない期間などがあればここから減額がされます。基礎年金は原則25年以上の加入期間が必要です。

また会社勤めをしている人の多くの場合は、上記であげた【国民年金】と一緒に【厚生年金】にも入っているでしょう。その為、【国民年金】の780,100円に【厚生年金】も上乗せされて給付されます。

【厚生年金】については一人一人異なる額になるために基礎年金のような一定の金額ではありません。これは給付の金額が報酬比例によって決まるからです。報酬比例というのは、それぞれの報酬や賞与によって厚生年金保険料を納めているため、それによってもらえる額が変わってきます。厚生年金は、基礎年金とは異なり、65歳から受給を開始する場合は、加入期間が1ヵ月以上あれば受給することができます。

この【基礎年金】と【厚生年金】の二つの年金を平均年収の男性会社員が受給した場合、平均で月額23万円が受給されます。これは、老後に基本的な生活をしていくのに必要な額ぐらいが受給されているということになりますね。

平成22年度の年金額について |報道発表資料|厚生労働省
参照元:厚生労働省 (2015年12月 著者調べ)

老齢年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構
参照元:日本年金機構 (2015年12月 著者調べ)

年金の繰り下げ受給とは?

年金は基本的には65歳から受給されます。しかし、60歳になり定年退職をした後もまだ働いたりして一定の収入がある場合などはまだ年金をもらうということが必要ないかもしれません。そんな時に使えるのが【年金の繰下げ受給】です。

年金の繰下げ受給とは、通常65歳から受け取れる年金を1ヵ月単位で遅らせるということです。「もらえるものは早くもらったほうがいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、繰下げ受給を行った場合のメリットがあります。

それは、65歳でもらえるはずだった年金額にちょっとしたおまけがついてきます。

◆繰り下げた月数×0.7%

この金額が年金に加算されるのです。つまりもらい始めるのを遅くすると、少しずつ年金の受給額が増えていくということになります。これはもしかすると、たくさんもらえる方法が見つかるかもしれません!

また、この繰下げ受給は、【老齢基礎年金】と【老齢厚生年金】の両方で行うことができます。

年金の繰り下げ受給の注意点

この年金の繰下げ受給には何点か注意点があります。細かく決まっているものがありますので、専門的な方に相談をするのが一番好ましいですが、何個か重要な点をあげておきます。

◆5年以上の繰下げはできない
◆年金の受給権利が発生したら一年以上は待たないと増額がされない
◆【老齢基礎年金】と【老齢厚生年金】は受け取りの開始をそれぞれで設定ができる

この様な決まりがあります。その他の決まり、注意点については下のサイトを参考にしてください。

老齢基礎年金の繰下げ受給|日本年金機構
参照元:日本年金機構 (2015年12月 著者調べ)

計算してみよう

計算のためのベース

それでは、この繰下げ受給を行った場合、得なのか?損なのか?あるいは、何歳からもらうのが一番いいかなどを数字的に見ていくために、基本数値となるものを提示しておきます。

◆【老齢基礎年金】は【老齢厚生年金】同時に受給するものとします。
→その為、平均年収の男性が年金を受け取った場合の平均値の約23万円を65歳からもらえるものとします。

◆65歳から80歳までの15年間を受け取ることとします。
→この80歳というのは男性の平均寿命からです。

さて、どの様な結果になるでしょうか?!

基本的な受給

65歳から受給した場合の総額はこの様になります。

受給総額=月額23万円×12ヵ月(1年間)×15年間(65歳から80歳まで)=4,140万円

【66歳から受給した場合(繰り下げ期間1年)】

増額率=12ヵ月(1年間)×0.7%=8.4%
1ヵ月の受給額=月額23万円×(100%+8.4%)=約24.9万円
受給総額=月額24.9万円×12ヵ月×(15年間ー1年間)=約4,183万円

【67歳から受給した場合(繰り下げ期間2年)】

増額率=24ヵ月(2年間)×0.7%=16.8%
1ヵ月の受給額=月額23万円×(100%+16.8%)=約26.8万円
受給総額=月額26.8万円×12ヵ月×(15年間ー2年間)=約4,180万円

【68歳から受給した場合(繰り下げ期間3年)】

増額率=36ヵ月(3年間)×0.7%=25.2%
1ヵ月の受給額=月額23万円×(100%+25.2%)=約28.7万円
受給総額=月額28.7万円×12ヵ月×(15年間ー3年間)=約4,132万円

【69歳から受給した場合(繰り下げ期間4年)】

増額率=48ヵ月(4年間)×0.7%=33.6%
1ヵ月の受給額=月額23万円×(100%+33.6%)=約30.7
受給総額=月額30.7万円×12ヵ月×(15年間ー4年間)=約4,052万円

【70歳から受給した場合(繰り下げ期間5年)】

増額率=60ヵ月(5年間)×0.7%=42%
1ヵ月の受給額=月額23万円×(100%+42%)=約32.6万円
受給総額=月額32.6万円×12ヵ月×(15年間ー5年間)=約3,912万円



結局得なの?損なの?

比べてみました

上記の計算から、それぞれの受給額を比べてみます。

◆繰り下げ期間1年:約4,183万円
4,183万円ー4,140万円=約43万円
65歳から受給するときと比べて約43万円得します。

◆繰り下げ期間2年:約4,180万円
4,180万円ー4,140万円=約40万円
65歳から受給するときと比べて約40万円得します。
しかし、繰り下げを1年間した場合と比べると3万円少なくなっているとこがわかります。

◆繰り下げ期間3年:約4,132万円
4,132万円ー4,140万円=約-8万円
なんと、65歳から受給するときと比べて約8万円の損をします。

◆繰り下げ期間4年:約4,052万円
4,052万円ー4,140万円=約-88万円
こちらも65歳から受給するときと比べて約88万円の損をします。

◆繰り下げ期間5年:約3,912万円
3,912万円ー4,140万円=約-228万円
こちらは、65歳から受給するときと比べると約228万円も損します。
これは大きいですね…

お得ではないかも…

著者としては意外な結果でした。例えば5年間も繰り下げた場合は、4割も増額されて、それが一生続くのに、結果はおよそ228万円もの損をしてしまいます。

この結果からすると、年金受給を繰り下げるには、2年以内の繰下げが多少は得をするということがわかりました。ここまで計算をしたのに、お得な結果というわけではないのでなんだかがっかりしてしまいました。

しかし、あくまでも平均寿命を基に計算をしています。この年金の繰り下げ受給を2年間よりも多く行う場合では、どのくらい長生きをしたら得をし始めるのかも考えてみることにしました。

どれくらい長生きしたらお得になるのか?!

では、年金の繰り下げ受給を2年間以上行った場合に、65歳から普通に受給するのに比べて得をし始める年齢は何歳になるのでしょうか?

◆繰り下げ期間3年
65歳から受給するのに比べて:8万円の損
65歳からの受給額より得し始めるのは:80歳1ヵ月以降

◆繰り下げ期間4年
65歳から受給するのに比べて:88万円の損
65歳からの受給額より得し始めるのは:80歳3ヵ月以降

◆繰り下げ期間5年
65歳から受給するのに比べて:228万円の損
65歳からの受給額より得し始めるのは:80歳7ヵ月以降

となりました。お気付きかもしれませんがこの計算上では、81歳を迎えるまでに、得をし始めます。
増額率は一生涯続くためあとは、通常でもらうよりも多くもらえる一方です。こうやってみると、ものすごく長生きをしなければ得をしないということではないことが分かりますね。

ちなみに、繰下げ期間の最大である70歳から年金を85歳までこれまでの例の通りにもらったとすると、総額5,868万円もの年金受給をすることになります。65歳からもらっていた場合は5,520万円になるので、約348万円も得をすることになります。長生きをすればするほどお得になるということには間違いはないでしょう。

まとめ

この様な結果から以下のようなことがわかりました。

◆年金を繰り下げて受給する場合は、平均寿命より長生きをすればするほどお得になる。

◆平均寿命までの受給を考えた場合には、繰下げは2年以内でないと損をする可能性がある。

実際に計算をしてみると数字として損か得かということが明確になるので、文字から考えるよりはわかりやすいでしょう。しかし、繰下げることを完全におすすめできるものでないように感じました。それは、総額として損得を考えているからです。

確かに退職金が十分にあったり、老後の資金がそれなりに準備出来ていたりしていた場合には、70歳からの受給でも問題ないかもしれません。単純に考えて、60歳で定年退職をした場合に70歳までは10年あるので10年は無収入の状態が続くということです。10年となると少し心配になりますね。また、65歳のときにはまだ年金はもらわなくても大丈夫と思っていても、68歳くらいで「そろそろ受給してもらおうかな…」では損が出てくるかもしれません。

生きていく中で、いつなにがあるかわかりません。健康に気を付けているからといって、長生きが保証されるわけではないのです。その為たくさんの年金を受給できるかどうかということはある意味、運にかかっているといってもいいのではないでしょうか。

もちろん5年繰り下げ長生きをすれば得をすることは明白にはなりました。ある程度将来のことを考えることは大切ではありますが、老後にその年金が必要であるのであれば、無理することなく受給する方がいいのではないでしょうか。老後の毎日を楽しく生きるためにも的確な判断が必要となります。
※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。