数次相続って何?「相続手続きは早めに済ませる」がGOOD!

「数次相続」という言葉を聞いたことのある人はどれくらいいるでしょうか?相続に無縁だった人は「初めて聞いた」という場合もあるかもしれませんね。具体的に二次相続、三次相続となるとイメージが湧きやすいかもしれません。実は相続税対策にも関係してきます。「数次相続」とはどういうことなのか、わかりやすくご説明しましょう。



数次相続とは?

相続が重なった状態のこと

数次相続から、一次、二次という具体的な状態が想像できるかもしれませんね。その通りのイメージでOKです。

数次相続とは、被相続人(亡くなった人)の遺産相続が開始された後、「遺産分割協議」あるいは「相続登記」を行わないうちに相続人の1人が死亡、次の遺産相続が開始されてしまうことを言います。

もっとわかりやすく具体例で説明しましょう。相続人が母と子である状態で被相続人の父が死亡(一次相続発生)し、その遺産分割協議が終了しないうちに相続人の一人であった母も死亡(二次相続発生)した場合のことを指します。子にしてみれば、父の相続の後に母の相続をすることになりますから、「相続が重なった状態」ということになります。

確かに想像してみると、こういうケースはあり得るということが感じられますね。

代襲相続との違い

相続に関する知識のある人で「代襲相続」という言葉を知っている場合は「代襲相続とどう違うの?」と気づくかもしれませんね。代襲相続との違いはどうなるのでしょうか。

「代襲相続」は、本来相続人となるべき相続者が相続開始前に死亡していたという場合、相続欠格・相続排除により相続権を失った場合にその子供達が相続する制度のことです。

具体的に例でご紹介しましょう。
例えば、Aさんは母との二人暮らし。父は2年前に亡くなっています。Aさんの祖父が亡くなり、本来祖父の相続人であったはずのAさんの父が亡くなっていたため、Aさんが祖父の遺産につき「代襲相続」することになりました。このようなケースが「代襲相続」です。

二次相続の例です。Aさんは父と母との三人暮らし。Aさんの祖父が亡くなり、Aさんの父が遺産を相続しました。しかし、祖父の遺産分割協議が済んでいない段階でAさんの父も亡くなってしまいました。Aさんには二次相続という状況が発生しました。このようなケースが「二次相続(数次相続)」です。

亡くなった順番の違いということですね。

民法の相続制度の概要
参照元:国税庁(2015年11月時点、著者調べ)



相続税改正の影響

二次相続に大きな影響

2015年1月からの相続税法改正で「相続税のかかる対象者」が増えることになりました。しかし、それ以上にインパクトがあるのが「二次相続への影響」です。

どういうことでしょうか。例えばAさんの父が亡くなったとして、母とAさんの兄と3人で遺産相続したとします。このときはあまり相続税の影響はない場合があります(よほどお金持ちでない限り)。なぜかというと、相続に関しては配偶者が優遇される制度となっているからなのです。

どう優遇されているのか?それは「配偶者が取得した財産が法定相続分、または、1億6千万円までのいずれか多い方までなら、配偶者には相続税がかからない」というルールです。なぜこのように決められているかというと、下記の条件があると言われています。そのため、配偶者が相続人となる一次相続では大きな相続税がかけられずに済むようになっているのです。

①財産の名義はどちらか一方のものであっても「夫婦の財産はお互いが助け合って築いてきたもの」と考えられること。
②さらに配偶者には「老後の生活保障が必要」であること。
③夫婦は基本的に同世代のため、いずれ近いうちに残った方も亡くなり短期間のうちに同じ財産に2度相続税がかかることになること。

また「相続税」のインパクトが大きいのは「二次相続」となります。相続人に配偶者がおらず子供だけというケースの二次相続では配偶者の分の優遇がなくなりますから、相続税の負担が大きくなることが考えられるのです。

第3章 相続税の課税価格と税額
参照元:国税庁(2015年11月時点、著者調べ)

自宅は生活の基盤だから

「自宅や家業として利用している小規模な土地の相続」に関しては、税負担軽減のために「小規模宅地等の評価減」の特例が認められています。

これは被相続人(亡くなった人)所有の自宅に同居をしていた人がその自宅を受け取った場合、330㎡まで2割の評価(つまり8割も評価が下がります!)で受け取れるという制度です。

たいてい父母は同居をしていますから、父の相続が起きたとしても母が相続人の場合はこの特例が適用されることになります。

被相続人の財産が不動産に偏っているような場合(家がほとんどの財産だった場合)に、相続税を払うために自宅や店舗などを売却して換金しなければならない事態を防ぐ意図があります。相続のために自宅や店舗といった「生活の基盤」を失うことのないように配慮された仕組みです。

8割減のおかげで相続した土地の評価額が大幅に減額され、課税遺産総額が少なくなり相続税の額を減らすことができます。地価の高い地域に住む人や商売をしている人にとっては大事な制度ですね。家や商売のための店舗を手放さなくていいことになります。

大事なこととしてこの特例を適用するためには「相続税の申告期限まで居住や事業を継続することが条件」となっています。別居していて「マイホーム(別の持ち家)に住んでいる子供」が相続する場合などは「居住用」の住宅はそのマイホームとなりますから、相続する住宅を「居住用」とはできません。つまり、この特例の適用を受けることができないのです。

逆に、マイホームを持っていない子供がこの特例を利用して一次相続のときに相続しておけば、二次相続のときに(母の遺産が減らされていることになるので)相続税の節税をすることができます。

このような仕組みを知り、相続の仕方を変えることで相続税は変わってくるのです。

※自宅の場合は330平方メートルまでの相続税評価額が80%減額ですが、店舗などの事業用は400平方メートルまでの相続税評価額が80%減、賃貸アパートなどの貸付用は200平方メートルまでが50%減となります。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|財産の評価|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月時点、著者調べ)

二次、三次で面倒になる?

関係者が増えるから

相続手続きが面倒だから、と遺産分割協議をきちんとしておかないで放置してしまう例もあるようなのですが、それは後々もっと大変な手間や労力がかかってしまうことになります。

どういうことでしょうか?具体的な例でイメージしましょう。

まず、Aさんの祖父が亡くなり、Aさんの父を含めた伯母や叔父に相続が発生したのですが遺産分割協議をしておかなかったとします。その後Aさんの父が亡くなり、Aさんの父の財産に対する相続人はAさんの母、Aさん、Aさんの兄、姉ということになりました。そしてその遺産分割協議もしていなかったところ、Aさんが亡くなってしまいました。Aさんには妻と子がありましたから、Aさんの遺産は妻と子が相続することになります。

いかがでしょうか?Aさんの「財産」はまだ未確定の祖父の分から関係してきますから関係者の数が多いのです。

まず、Aさんの祖父の分の関係者として、伯母、叔父、Aさんの父の分の関係者としてAさんの母、Aさんの兄と姉、そしてAさんの分の関係者として妻と子、全ての人が「Aさんの財産の関係者」となってしまいます。総勢7人です。話をまとめるのも大変です。もしAさんの伯母か叔父のどちらかが認知症にでもなっていたらさらに話はややこしくなります。

Aさんの祖父の分の1次相続、Aさんの父の分の2次相続を済ませていれば、Aさんの遺産分割についてAさんの妻と子で比較的簡単に決めることができたのです。

相続が発生した時の「遺産分割協議」は早めに済ませておくことが大事と言えそうです。

相続人に認知症の人がいる場合

例えば遺産分割をするときに、相続人の中に認知症の人がいた場合、どうしたら良いのでしょうか。

認知証で判断能力を欠いている場合、有効な相続手続きを行うことはできませんね。判断能力が衰えたことを利用して、本人の知らないうちに勝手に相続手続きを進めるというのも問題です。このようなときは「成年後見制度」を利用します。

成年後見制度は、認知症や障害などの理由で判断能力を欠いた人が財産面で不利益を被らないように保護・支援する制度となっています。

遺産分割のような法律行為に関しては、「判断能力を有していること」が必要となっています。判断能力を欠いた人と遺産分割協議を行っても「無効」になるのです。

相続人の中に認知症の人がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任申し立てを行った上で後見人を含めた相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。 成年後見人は親族だけとは決まっておらず、司法書士などの専門家でも大丈夫です。



二次相続時の負担を減らすために

一次相続のときから考えておく

配偶者がいる一次相続の場合、配偶者は1億6000万円まで非課税という「配偶者の税額控除の特例」があります。しかし、これを利用して「その時点でトクをすることだけ」考えて相続を行うのは「二次相続までトータルで考える」と得策でない場合があります。

一次相続で配偶者の優遇を最大限利用したとしても、いずれその配偶者が亡くなり、子供達がそれらの財産を相続すればそのときに相続税の課税対象になります。子供などの相続人に発生する「二次相続時の相続税」と一次相続時の相続税を合わせて考えることがポイントとなります。

どういうことなのか、具体的な金額でご紹介しましょう。

二次相続のときにかかる相続税

父が亡くなり、相続人が母と子供2人だった場合で考えましょう。父が亡くなったときが一次相続、その後母が亡くなって子供二人が相続をしたときが二次相続です。

まずは一次相続で「配偶者の優遇を利用する」ために母が100%相続したパターンです。

【遺産額:一次相続(母が100%相続)の相続税:二次相続(子供が半分ずつ)の相続税:相続税合算】
・4000万円:0円:0円:0円
・5,000万円:0円:80万円:80万円
・7,000万円:0円:320万円:320万円
・1億円:0円:770万円:770万円

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×2=4,200万円ですから、遺産額が4,000万円の場合はいずれにしろ0円ですが、それ以上高額になると相続税がかかってきていますね。ある程度の遺産額までは一次相続での相続税を0円とすることができます。

次に「一次相続で相続税が発生しても二次相続の際の相続税を考慮して一次相続での母の割合を50%とした場合」です。

【遺産額:一次相続(母が50%、子供が25%ずつ相続)の相続税:二次相続(子供が半分ずつ)の相続税:相続税合算】
・4000万円:0円:0円:0円
・5,000万円:10万円:0円:10万円
・7,000万円:110万円:0円:110万円
・1億円:290万円:80万円:370万円

いかがですか?一次相続のときに相続税がかかって損をしたように思えても、実は二次相続分がぐんと減ることがおわかりになることでしょう。ですから、「二次相続まで考えて一次相続を行う」ことは節税対策として大変有効なのです。

相次相続控除の制度もあります

「相次相続控除」という制度がありますのでご紹介しましょう。
 
一次相続が発生した後に続けて二次相続があった場合、相続税を短い期間に二度払うことになりますから相続人は大変です。そのために「相次相続控除」という制度があります。

一定の金額を相続税額から引いてくれる(控除してくれる)制度ということです。期間が決まっており、「10年以内」に続けて相続があると、2回目の相続(二次相続)では1回目に払った相続税の一部を差し引くことができるのです。ただし、適用できるのは法定相続人に限られるという条件はあります。注意が必要ですね。
 
相次相続控除は算式で決められています。一次相続と二次相続がほぼ同時に起きた場合は、二次相続のときに一次相続のときの相続税額をほとんど差し引くことができるようになっています。逆に、一次相続と二次相続との間が長くなればなるほど、差し引ける金額が少なくなる式となっています。

計算式は細かいので特に紹介はしませんが、計算式の中に「一次相続と二次相続の間の年数」がしっかり組み込まれているのです。よくできていますね。

第3章 相続税の課税価格と税額
参照元:国税庁(2015年11月時点、著者調べ)

二次相続まで考えて一次相続を行うのがおトク

いかがでしたか?相続税が改正されたことで、相続税対象者が増えたと言われています。

配偶者が相続人にいる場合の一次相続ではあまり心配のいらない相続だったとしても、二次相続では相続税がそれなりにかかるというケースもあり得ます。何も考えず遺産分割をするより、二次相続を見据えて一次相続をすることによりトータルで考えるとおトクとなる場合がありますので、知っておくと良い情報と言えますね。

いつか起こる相続のための豆知識として、今回の内容を役立ててみてはいかがでしょうか。 *本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。