老後資金を検証!300万円から1億円までのウソ、ホント?

老後資金はホントのところいくら必要なの?と思っている方が増えているのではないでしょうか?1億円、6,000万円、3,000万円、2,000万円、1,000万円、300万円…。諸説あるため「本当はどうなのよ!」と少々イラッとさせられている筆者が検証してみました。



「下流老人」の語源

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)
「下流老人」という言葉をあちこちで目にするようになりました。生活困窮者の支援を行うNPO法人の代表で、社会福祉士の藤田孝典さんという方による「造語」で、2015年に朝日新聞出版(朝日新書)から出版された藤田さんの著書の書名が語源だそうです。

藤田さんご本人の定義によれば、下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」のことだそう。

経済学や社会学には「貧困線」という指標があり、貧困線以下で生活する人への生活保障や失業給付など、社会保障政策的な法の整備や施行の参考にされることがあります。日本では国民貧困線は公式設定されていませんが、生活保護基準が(社会保障の)実務上の目安となっています。

上記をふまえ、「下流老人にならない」という言葉を、「リタイア後も生活保護基準以上の収入と生活レベルを維持する」という解釈のもと、老後資金の検証を進めてみましょう。



生涯賃金に関する疑問

老後資金について考えた時、そもそも現役時代に、人はどれくらい「稼げるのか」という疑問が湧いてきました。

「生涯賃金」は、人が就職してから退職するまでの期間に得られる賃金、賞与の総額です。一般的に生涯賃金は「平均年収」×「労働年数」で算出します。

■ 平均年収 × 労働年数 = 生涯賃金

総務省統計局のホームページを参照したところ、生涯賃金を調べる方法としては以下の3つのソースのデータが活用できそうです。

・ 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
・ 公益財団法人 日本生産性本部「活用労働統計」及び「賃金・労使関係データ」
・ 一般財団法人 労務行政研究所「賃金決定のための物価と生計費資料」

今回は、平成26年(2014年)の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」概況を参照して生涯賃金の算出を試みることにします。

統計FAQ 16C-Q07 生涯賃金
参照元:総務省 統計局HP(2015年11月現在、筆者調べ)

賃金構造基本統計調査
参照元:厚生労働省HP(2015年11月現在、筆者調べ)

都道府県別賃金

男女別、年齢別、産業別、学歴別など、様々な切り口で調査が行われているのですが、できるだけ均(なら)した賃金データをとろうと考え、都道府県別データを利用することにしました。結果は以下の通りです。

全国平均:299.6万円
東京(最高):377.4万円
青森(最低):226.6万円

ランキング上位は東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府の5都府県になっており、最下位だったのは青森県でした。

全国平均が299.6万円で、最上位の東京と最下位の青森の賃金を加重平均すると302万円ですから、およそ300万円を全国平均と仮定することにしました。

都道府県別の賃金|平成26年賃金構造基本統計調査 結果の概況より
参照元:厚生労働省HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

労働年数について

定年が65歳に延長されている企業も増えているようです。今後は若年労働力の減少に伴い多くの企業で従業員に60歳以降も継続して働いてもらわなければ、必要な労働力を確保できないかもしれません。

高校卒の場合は18歳から、大学卒の場合は22歳から、65歳まで間断なく働くとすると勤続年数は40年を超えますが、ここでは労働年数は40年と仮定して計算してみたいと思います。

平均年収 × 労働年数 = 生涯賃金 の式に当てはめてみると、

■ 300万円 × 40年 = 1億2,000万円

生涯賃金の概算は1億2,000万円となりました。

退職金の相場

上記の生涯賃金には退職金が含まれていませんから、退職金の相場も見てみましょう。

退職金についても色々なデータがあります。一口に大企業、中小企業、公務員などとひとくくりにしようと思っても難しいところですが、総務省統計局のホームページによると、退職金の統計データには以下のようなものがあるようです。

1. 厚生労働省 「就労条件総合調査」「退職給付(一時金・年金)制度・支給実態」
2. 中央労働委員会事務局総務課広報調査室「賃金事情等総合調査」
3. 一般社団法人 日本経済団体連合会「退職金・年金に関する実態調査」

なお、公務員の退職手当の支給状況は、以下で確認することができるようです。

1. 国家公務員-総務省ホームページに掲載されている「退職手当の支給状況」
2. 地方公務員-総務省の実施している「地方公務員給与実態調査」

統計FAQ 16C-Q08 退職金
参照元:総務省 統計局ホームページ(2015年11月現在、筆者調べ)

民間企業の退職金相場

それぞれのデータをつぶさに調べて比較するのが本稿の目的ではありませんので、閲覧のし易さを鑑み厚生労働省 「就労条件総合調査」「退職給付(一時金・年金)制度・支給実態」で確認してみることにしましょう。2015年11月現在で閲覧可能な直近データは平成25年(2013年)公表分です。

勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者のうち、勤続35年以上の定年退職者について、退職給付(一時金・年金)制度の形態別に退職給付額を確認したところ、以下のようになっていました。

■大学卒(管理・事務・技術職)

・退職一時金制度のみ 1,567万円
・退職年金制度のみ 2,110万円
・両制度併用 2,562万円

■高校卒(管理・事務・技術職)

・退職一時金制度のみ 1,470万円
・退職年金制度のみ 1,822万円
・両制度併用 2,272万円
 
■高校卒(現業職)

・退職一時金制度のみ 1,184万円
・退職年金制度のみ 1,541万円
・両制度併用 1,872万円

民間企業の退職金額の幅は以下のようになることが分かりました。

・退職一時金だけみると
  1,184万円~1,567万円
・退職年金制度のみでは
  1,541万円~2,110万円
・両制度併用だと
  1,872万円~2,562万円

下は1,184万円から上は2,562万円までの幅があるようです。

退職給付(一時金・年金)の支給実態|平成25年就労条件総合調査結果の概況より
参照元:厚生労働省HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

公務員の退職金相場

国家公務員は勤続年数40年以上の平均額を抽出しました。

・2,502万円

地方公務員は「全地方公共団体」の25年以上勤務後の一人当たり平均手当額の中から主なものとして以下を抽出しました。

・一般職員 2,422万円
・教育公務員 2,520万円
・警察官 2,424万円

2,422万円~2,520万円という幅になりました。

公務員の退職金額は2,400万円が下限なんですね。予想通り民間より高めでした。

地方公務員給与実態調査
参照元:総務省HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

統計FAQ 16C-Q08 退職金
参照元:総務省 統計局HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

生涯賃金+退職金

民間と公務員をまとめて比べてみれば、民間高校卒の退職一時金のみの平均1,184万円が最下位で、最上位が地方公務員中、教育公務員の平均2,520万円ということが分かりました。

・1,184万円~2,520万円

最上位と最下位の加重平均では1,852万円となるのですが、日本のサラリーマンの7割は中小企業の従業員だということも鑑み、退職金額の相場は1,500万円と仮定してみることにします。

■1億2,000万円+1,500万円=1億3,500万円

生涯賃金に退職金を足した生涯収入額の平均は、1億3,500万円と仮定することにします。



老後資金1億円の検証

老後に必要なお金が「1億円」という記事を見つけるたびに毎回「ええっ!」とのけ反ってしまうのは私だけでしょうか?生涯収入が1億3,500万円(試算)なのに、どうやったら老後資金を1億円も残しておけるのかしら?と考えてしまいます。

「1億なんて、そんなわけないでしょっ!」と読み飛ばしてしまいたいところですが、執筆にあたってきちんと内容を読ませていただくことにしました。

何事もきちんと中身を確認しなくてはわからないものです。中には「1億円の資産がないと老後が危ない!」というヘッドラインが躍る記事もありますが、よくよく読んでみれば、定年時点で1億円の資産がないと駄目とは(本当は)言っていないようなのです。

老後資金の計算

例えば、60歳で定年を迎えた夫婦二人(ともに60歳と仮定)の生活費が月に25万円だったとします。85歳までの25年間でいくらかと資産すると、

・25万円×12カ月×25年=7,500万円

その後、ご主人が亡くなり(ごめんなさい!)奥さんが100歳まで、15年間長生きしたとして、その生活費を、

・18万円(月)×12カ月×15年=3,240万円

上記のように仮定した場合、総額「1億740万円」のセカンドライフの生活資金が必要、という結果になります。

・7,500万円+3,240万円=1億740万円

100歳というかなり長めの寿命で計算しているとしても、「老後資金1億円」はそれほど間違った試算ではないのかもしれません。

収入(公的年金)を忘れてない?

しかし、根本的に欠落しているのは公的年金の給付額、つまり「老後の収入」です。リタイア後の生活支出合計だけを算出して「1億円」と言われてもねぇ…と思います。

仮に、ご主人が平均報酬月額36万円で40年間就業した場合の元サラリーマン、奥様が専業主婦だったとして、満額で老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額を受け取った場合、夫婦の年金の給付額は22万円前後であると想定されます。

年金からも税金や、健康保険料等は差し引かれますから、手取りの年金額を月20万円と仮定し、60歳~85歳までの25年間の収入額を計算してみると、

・20万円×12カ月×25年=6,000万円になります。

ご主人が亡くなると、奥様が受け取れるのはご自身の老齢基礎年金と遺族厚生年金になりますが、遺族厚生年金額はご主人が受け取っていた老齢厚生年金額の3/4を目安に、奥様の老齢基礎年金を6万円、遺族厚生年金を7万5,000円と仮定してみましょう。

・6万円(妻の老齢基礎年金)+7万5,000円(遺族厚生年金)=13万5,000円

ご主人が亡くなった後、奥様が85歳から100歳まで15年分の給付額を計算してみます。

・13万5,000円×12カ月×15年=2,430万円
・6,000万円+2,430万円=8,430万円

ご夫婦二人で生活する85歳までの給付額を6,000万円、ご主人が亡くなった後の15年間の給付額を2,430万円と仮定すると、合計8,430万円は公的年金で賄える計算になります。

公的年金制度の概要 |公的年金制度の概要について紹介しています。
参照元:厚生労働省HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

遺族年金制度
参照元:厚生労働省HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

老後収入と支出の差額分

老後40年(60歳~100歳)の生活費である1億740万円から、公的年金の8,430万円を引いてみると、差額は2,310万円です。

・1億740万円-8,430万円=2,310万円

こうなると、老後の生活を補うために必要な額としては、2,000万円もあればいいのではないか、という目安が立つようなのですが、年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、「将来は70歳にならないともらえなくなる」などという声も上がっています。定年退職してから支給開始年齢までの間の空白期間の収入はどうしたらいいのか、という問題が残ります。

空白期間(65歳~70歳の5年分)を補う分を別途貯蓄で賄えるのかどうか、考えさせられます。

・20万円×12カ月×5年=1,200万円

すると、先ほど試算した老後の生活を補うために必要な貯蓄額の概算である2,000万円にさらに追加で1,200万円分が必要となり、合計は3,200万円に膨らみます。

生涯収入-老後に必要な貯蓄額

生涯賃金+退職金の試算1億3,500万円から老後に必要な貯蓄額3,200万円を引くと、1億と300万円になります。

22歳~70歳までは48年ありますので、

1億330万円÷48年=約214.6万円

つまり、単純計算では、毎年の家計支出を214.6万円以内に抑えられなければ、3,200万円の貯蓄は無理、という計算になってしまうのです。

「年収200万円時代の到来」と言われるわけです。

では、「老後のことなんて知るか!何とかなるさ!」と、潔く老後資金用の貯蓄3,200万円を諦めて、70歳までにパーッと使ってしまおう!と思った場合はどうでしょう?

・1億3,500万円÷48年=281.3万円

生涯収入1億3,500万円を48年で均等に割ってみたとしても…約281.3万円にしかなりませんでした。なんだかちょっぴりガッカリです。

老後生活費の実情

老後の生活費の調査は各種ありますが、「高齢夫婦無職世帯」の生活費は月額いくらぐらいかかっているのでしょうか?

総務省統計局の「家計調査年報:家計収支編」平成26年(2014年)年報から見てみましょう。

■世帯主が高齢無職の世帯 の収入

総世帯のうち高齢無職世帯(世帯主が60歳以上の無職世帯)の実収入は170,638円で、直接税、社会保険料などの非消費支出は22,878円、結果、可処分所得*は147,761円となっています。

可処分所得*が147,761円とは思ったより少ないな、と思うかもしれませんが、前の項でモデルとした「元サラリーマン」ではなく、元自営業の人などの場合、支給されるのは老齢基礎年金のみです。そうした世帯では、夫婦二人で月額10万円前後の基礎年金しか支給されないため、実収入額が低くなるのだと考えられます。

*可処分所得とは、課税前の収入から、支出が義務付けられている税金と社会保険料を差し引いた残りの所得。自由に使える手取り収入

家計調査年報(家計収支編)
参照元:総務省 統計局HPより(2015年11月現在、筆者調べ)

高齢世帯の消費支出

消費支出とはいわゆる生活費のことですが、税金や健康保険料などの非消費支出に対する語として第2次世界大戦後,総務庁 (現総務省) 統計局で行われた家計調査において用いられるようになったようです。

2014年の同調査結果をみると、60~69歳の世帯は295,955円,70歳以上の世帯は241,266円となっています。

可処分所得から60~69歳の世帯の消費支出を引き算してみると以下のようになります。

・147,761円-295,955円=-148,194円

つまり、毎月15万円近くの赤字となっているのです。収入に比べ支出が随分多いことが分かります。貯蓄やその他の資産を取り崩して生活費の不足を補っていること等がうかがえます。

この数字を元に60歳から85歳までの25年間の赤字総額の概算を計算すると、

・-148,194円×12カ月×25年=-4,446万円

なんと4,500万円もの赤字です。

これでは、100歳までの老後に必要な老後資金が5,000万円や6,000万円という試算があってもおかしくないではありませんか!

2015年現在、60歳、70歳以上の高齢者の方々は、現役時代に一生懸命貯蓄もできた世代だった可能性があります。高齢者を狙った高額詐欺被害のニュースを聞くたびに、「頑張って若い頃からお金を貯めていたんだな」と感心すると同時に、犯人の卑劣さに怒りが込み上げます。

老後資金300万円説の検証

プレジデント・オンラインで非常に興味深い記事を発見したのでご紹介します。記事タイトルは「老後の備えは300万の定期預金で十分」のワケ、です。2012年12月31日号となっていますから、少し以前の記事になります。

エコノミストで経営コンサルタントの中原圭介さんが投稿された記事です。リンクを貼らせていただきますのでご興味のある方はぜひ全文をお読みになってみていただきたいのですが、すごく端折ってポイントをまとめさせていただくと、以下が論説のポイントになるのではないかと思います。

1. 資本主義の限界が迫っているとみている
2. 退職後の生活を具体的に描き必要額を考える
3. 生涯現役を前提に働き続ければいい

1. については、私も非常に危惧しているところです。しかし、私個人としては、世界経済のシステムの中に金融資本主義が深く組み込まれてしまっているために、これを維持し続けるためにはあらゆる手段がとられ、小康状態を保ちつつも延命する(延命させる)のではないかと考えています。

ほとんど生命維持装置が外せないような状態ではある、と私も思ってはいるのですが、時々目新しい投資テーマや画期的な技術やサービスの出現があり、小さなバブルとその終息を繰り返しながら、過去に見られたような右肩上がりの成長はしなくとも、何とか存続し続けるのでは、と見ています。

最近、「資本主義における市場の健全な状態」とはどのようなものだろうか?とよく考えさせられます。日本に限らず海外市場でも、つい最近の中国共産党政府が行ったような「なりふりかまわぬ」市場への公的資金による介入があるたびに、「行き過ぎた金融資本主義経済」の末路への不安を抱かずにはいられません。

2. リタイア後の生活を具体的に描き、そのためにいくら必要なのかを考える―については、私もまったく同意見です。

3. 生涯現役を前提に働き続ければいい、については半分同意、半分疑問という感じです。確かに70歳ぐらいまで元気に働き続けられればいいのですが、私の高齢の両親やその周辺の方々を見るにつけ、「難しいな」と思わざるを得ません。

確かにお元気な方も多いのですが、肉体的な面ばかりではなく、気力の面でもなかなか大変そうです。簡単な家事労働も年々面倒になっていく中で、さらに仕事も、となると「果たしてどうだろうか?」と考えてしまいます。もちろん、個人差があることなので一概に「無理でしょう」とも言えないのですけれど。

高い専門知識や経験値がある人が、年齢で区切られて「はい、引退」となってしまうのは「勿体ない」ということは間違いなく言えるのではないかと思います。

「老後の備えは300万の定期預金で十分」のワケ お金のプロが実践!鉄壁の家計術【年収500万】
参照元:PRESIDENT Online より(2015年11月現在、筆者調べ) 参照元の記事は2012年12月31日号付

不安の正体を冷静に見る

老後の不安が肥大化していくのを日々感じます。しかし、現在50代、60代の人ならともかく、それ以下の年齢の方については、20年、30年以上も先の話です。

私がまだ20代の頃、将来に対する不安でいっぱいの日々を過ごしていました。テレビや新聞、雑誌などの情報にいつも振り回されて「果たして私の将来はどうなるんだ」とか、「同い年のあの人に比べて私はどうなのか」などと常に悩んでいたものです。

そんな私の様子を見た当時のアメリカ人の上司から「もう、テレビも新聞も雑誌も見るな!この馬鹿者め!」とよく叱られたものです。

「じゃあ、テレビも新聞も雑誌もない、ついでに電話もファックスもない南の島に行きたいので休暇をください」と言って即刻却下されたり…。肝の座った40代に成長した今となっては懐かしい思い出です。

「不安」が時に人を間違った方向に導くこともあります。冷静に考え抜いていれば避けられたかもしれないのに、どうしてあの時あんな選択をしたんだろう?と思い返してみると「不安」が原因であったりすることが多かったりします。

「老後の不安」についても、なぜそんなに不安なのか、理由は何か?ではどうしてその理由が克服できないのか?等を考えながら、以下でご紹介する「不安を克服する10の方法」を読んでみて下さい。

不安を克服する10の方法

アメリカで発行されている「Real Simple」という雑誌に紹介されていた認知心理学者のロバート L. リーヒー博士による「不安を克服する10の方法」をご紹介します。

1. 飽きるまで繰り返す
Repeat your worry until you're bored silly.

 心配ごとを静かに、ゆっくりと、20分ほど繰り返し唱え、考え抜いてみよう。同じことを考え続けることに飽きる、という境地に達することがあります。「退屈療法」とでも名付けよう。

2.わざと失態を演じる
 Make it worse.

 たとえばプレゼン中、完璧にやろうと思うと、少しの間違いで真っ白になってしまいます。一度あえて軽く失態を演じてみては?「しまった、私、今何て言いました?」などととぼけて聞き手の反応を見て欲しい。別に何の問題も起こらないはず。

3. 想像力の豊かさを受け入れよう
 Don't fight the craziness.

 人の脳は様々な想像や妄想を勝手に作り出します。それを、自分はおかしいのだろうか?などと気にして自己嫌悪に陥るのは無駄なことです。自らの想像力の豊かさを受け入れ、先へ進もう。

4. 緊張が遠のくさまをイメージ
 Recognize false alarms.

 心臓がドキドキ脈打からと言って心臓発作を起こすわけではありません。緊張時の体の自然な反応です。緊張自体が警報器の誤作動みたいに遠のいていく様子をイメージしてみよう。

5. 映画を鑑賞するように不安を客観視しよう
 Turn your anxiety into a movie.

 緊張や不安に飲み込まれそうな時は、その不安を「映画」と捉えてみよう。小さな男が奇妙な帽子の中でタップダンスを踊り、あなたが抱いている不安を高らかに歌っている演劇です。あなたはポップコーンを食べながら、観客のひとりとして静かにその男の歌とダンスを鑑賞するのです。

6. 「心配タイム」を作る
 Set aside worry time.

 「心配」はふっと心に浮かんだ瞬間にとらわれてしまうものです。他にすべきことがあるのに、突然舞い込むメールのように、時間が奪われてしまうのです。そんなメールがくる度にいちいち中身をチェックする必要はありますか?
 毎日「午後4時半から20分間」など「心配タイム」を設けるといいでしょう。浮かんだ心配事は一旦脇に置いて、「心配タイム」が来てから考えてみる。時間を置いたことで、もうどうでもいい、と思えることが増え、やがて心配から解放されるでしょう。

7. 時には自然に身を任せる
 Take your hand off the horn.

 どうにもできないことをコントロールしようとするのは、エネルギーの無駄な消耗です。溺れそうな時に悲鳴をあげながら手足をバタつかせるよりも、手足を大きく広げ、ゆったり水に浮かんで楽にしたほうがいい場合もあります。すぐに全てを何とかしようと焦らずに、身を任せてみれば意外と何とかなったりするものです。

8. 深呼吸する
 Breathe it out.

 体が緊張している時には呼吸が止まっていることが多いものです。神経を落ち着かせのに、呼吸法は月並みだけれど有効な手段です。ゆっくりと自分の呼吸のリズムに耳を傾け、あちこちに散らかった自分の心も、呼吸といっしょにだんだんと整っていくさまをイメージしましょう。

9. 時間が解決することもある
 Make peace with time.

 心配性の人にとっては、全てが緊急の大問題に思えてしまいます。しかし、どんな問題もいつかは必ず過ぎ去るもの。今自分を苦しめているパニックも悩みごとも、必ず過去のものになるのです。今の悩みについて1週間後、1カ月後の自分はどう考えているかしら?と想像してみましょう。

10. 悩みに人生を邪魔させない
 Don't let your worries stop you from living your life.

 悩みがあるからと言って人生は止まってあなたを待っていてはくれません。睡眠不足も高鳴る心臓も、小さな恥も、ちょっと不便ではあるでしょうが、そんなものは振り払って生きるのです。

「Real Simple」はアメリカでは結構売れている雑誌の部類に入るのではないかと思います。アメリカに行くと空港にあるブックスタンドなどでサッと買って飛行機に乗り込み、フライト中にじっくり読み込むのが私の定番です。隣の席の人と「これってどう思う?」などと気軽に内容を共有できる「コンテンツのユニバーサル性」もいいんです。「Real Simple」 は日本版もかつて発行されていたのですが、残念ながら現在は休刊しています。

10 Ways to Cope With Anxiety
参照元:Real Simple(英文)サイトよりPsychologist and author Robert L. Leahy has been helping patients manage their worries for 28 years. Follow his advice—and breathe easier. 和訳は筆者解釈による抄訳です。

答えは自らの暮らしの中に

老後資金の検証、いかがでしたか?

私が検証した手法で算出した(参考)平均値では、老後生活資金は1億740万円に対し、受け取れる公的年金の額は8,430万円。その差額は2,310万円となり、65歳までに必要な貯蓄は2,000万円前後となりました。寿命を100歳までと長めに仮定しているので、2,000万円程度でもいいだろう、という考え方です。公的年金額の範囲内で暮らしていける場合には、貯金をそれほど取り崩さずに人生を走り抜けられるかもしれませんしね。

現在言われているように将来70歳まで年金の給付開始時期が遅くなった場合や、ご自身で年金を少しでも多くもらうために給付時期を遅くする(繰り上げ)申請をする、という選択肢を考えると、65歳からの5年分の生活費目安である1,200万円も必要になるかもしれない、と考え試算してみました。そうなると必要貯蓄額は総額3,200万円ということに(あくまで計算上ですが)なります。

また、現在の高齢者の支出動向から、公的年金給付額の平均を大きく上回る(毎月30万円程度)の生活支出を見込んだ退職後生活を想定するのなら、必要貯蓄額は5,000万円にも6,000万円にも膨らんでしまうことが分かりました。

貯蓄が難しいのなら、老後の生活費を給付額の範囲内に収めるためにはどうしたらいのか、現役世代のうちに月額20万円の暮らしの目処をたてておく必要があるかもしれません。

現役時代には子供の教育費や、住宅のローンなど、多額の出費はやむをえないところでしょうが、今回の検証がご自身の家計の見直しの一つのご参考になれば調べた甲斐があります。

平均年収を300万円、退職金額を1,500万円など、今回使用した数字はどれも「仮定」の数字でしかありませんから、その点をお忘れないように。

今回の検証は特に50歳以上の方のことを考えて細かくデータを調べました。50歳以上の方にとって定年は少し先の想定可能な将来です。今回私が試みたように、ご自身が実際に受け取っている給与の額を基に、65歳の定年までの収入総額を計算してみてはいかがでしょう?そのうちいくらを貯蓄に回せそうですか?住宅ローンの残額は定年前に返済できそうでしょうか?

受け取る予定の退職金額や年金給付額などの数字も併せて確認してみるきっかけになればと思います。退職金額が想定していたより低くて「老後の明るい見通しが一気に萎んだ」という退職した方の声も時々聞きますから…。

これらはすべて2015年の11月の情報に基づくもので、20代、30代の若い人達が老後を迎える頃には年金制度もガラッと変わっているかもしれません。

将来に備えることは大切ですが、悲観的になりすぎて「年金を払わない」などという選択はしないようにして欲しいな、と思います。

制度そのものもそうですが、給付額も時代に合わせて変わっていくのが前提です。今回の検証をお若い方々が鵜呑みにする必要はありませんが、ご自分の生活を振り返り、老後不安を解消する糸口になればと思います。

まとめ

老後生活資金1億円は間違いではありませんでしたが、老後の生活支出だけに焦点を絞り、強調されて伝わっていったため「老後までに1億円貯蓄しなくちゃ下流老人」などという誤解につながっていってしまったようです。

各人の年金の受給額にもよりますが、月額20万円程度の範囲内で老後の生活費を抑えられる人ならば、2,000万円程度の貯蓄があれば(ぎりぎりかもしれませんが)大丈夫そうです。

年金の受給額が少ない人や、生活支出額を25万円、30万円と現役世代並みに維持したいような人は、5,000万円、さらに長生きする場合には6,000万円の貯蓄が必要かもしれません。

一方、生涯現役で働くことを前提とするような人なら、1,000万円以下の貯蓄でも何とかなるのかもしれません。ただし、現役時代と同じペースで働き続けられるのか、収入額はどの程度見込めるのか、加齢による病気やケガなどのリスクは年齢を重ねれば重ねるほど上がりますから注意が必要でしょう。

今回確認してみて私なりに貯蓄の目標額がつかめたのですが、私が65歳を迎えるのはまだ20年ほど先になりますから、あまり「躍起になって」貯蓄に励む必要はなさそうだ、という私なりの結論を得ました。

※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。