相続財産の行方と共に考える。あなたの死とペットのこと。

あなたが亡くなれば、相続財産は自動的に相続人に分割されます。ですが、いくらペットが可愛くても、相続財産を犬や猫に受け継がせる方法はありません。あなたが亡くなれば愛犬・愛猫は明日の日から生活の保障がありません。何かできることはないのでしょうか?残せるものはないのでしょうか?あなたの死と相続とペットについて考えます。



相続財産と死とペット

ある日突然、あなたは亡くなりました。家には愛するペットが残されました。さあ、今日からペットは誰が世話をするのでしょう?どうやって暮らして行けばよいのでしょう?

ペットを飼っている人なら誰しもが抱える不安ではないでしょうか。自分が死んだらこの子はどうなるのだろうと想像して怖くなったりしませんか?そして、こうも思うのではないでしょうか。私に何かできることはないのだろうか、と。お金を残せば誰かが世話を引き継いでくれることはないだろうか、と。何とか生活の保障をしてあげられたら、財産を残せたらいいのだけど、と。

あなたの死と相続、そしてペットについて考えてみましょう。



あなたの遺す相続財産とペット

ペットは相続できない?

アメリカでは犬や猫が主人の死後に多額の遺産を相続したという話があります。しかし日本ではペットが財産を相続することはできません。あなたが亡くなると、ペットのご飯や病院代として積み立てておいた預金も全て相続財産として夫や子供といった相続人に、それぞれの取り分ずつ分割されて相続されることになります。

「そのお金はペットのご飯と病院のために積み立てておいたのに!」と残念がっても意味がありません。いかに家族のように可愛がっていたとしてもペットは相続財産を受け取れない、これが日本での答えです。

そもそも、日本ではペット名義の口座を作ることができません。ペット用にお金を分けて準備している人でも、自分名義の口座を作ってそこにお金をプールしていることと思います。ですから、ペットが仮に相続したとしてもお金の管理はどうするの?という問題が発生します。また、仮に不動産を相続したとしても、ペットが固定資産税を払えるはずもありませんし、手続きだってできません。

ペットは相続財産を自分で所持できない。ですから、誰か人間の力を借りて遺産を渡し、所持してもらい、自分の代わりに管理してもらう必要があります。現在の日本では、これが限界であり唯一の方法であると言えます。

じゃあどうするの?

あなたが亡くなってもペットは生き続けます。そして、相続もできませんから、あなたが亡くなった時点でペットは生活の伝手なく、明日の日も分からない状態になります。想像するだけで飼い主は心が締めつけられる思いです。しっかりと自分の死とペットの将来に向き合い、今からできることをしておくことが必要です。

財産をペットのために使う方法としては、「遺言」「信託」という方法があります。ペットの衣食住のためには「家族に託す」「知人に託す」「情報収集する」「犬・猫の介護ホームなどの施設を検討する」という方法があります。この他に、自分の死後にペットの暮らしを人に託す際の負担を減らすため「情報を一カ所にまとめておく」という方法があります。

相続財産をペットに使う方法

ペット自体は相続ができません。生活費を自分で持つこともできません。ですから代わりの方法を模索することが必要になります。自分が死ぬまでに何もしていなければ、後は相続人や家族の好意頼りです。ご紹介する方法は、全て死ぬ前に動き出すことにより、ペットの生活費を準備する方法です。

遺言を活用する

遺言は相続財産の分割方法を指定する他に、ペットの今後についても書き記しておくことができます。また、人に遺産を渡す代わりに義務を負わせることも可能です(負担付遺贈)。ですから、相続財産をペットの今後のために、自分の死後に飼育をしてくれる家族や知人に渡すことを指定することができます。

自分の預金は本来相続財産として相続人が受け継ぐことになりますが、ペットの飼育に必要になる一定額を遺言で受け取れるように指定するわけです。もちろん、引き取り手には事前に自分のペットを引き取ってくれるように話をつけておく必要がありますが、ペットの今後の生活費を考える上では使える方法です。

相続人の誰かや家族がペットを引き取る場合、ペットの飼育費としてその人の相続財産を多めに指定することや、相続権が無い場合は遺贈も検討しましょう。また、ペット用に資金をプールしておいた口座内の財産を丸ごと受け継いでもらうという方法もあります。今度はその人がペット用にその財産を引き継いで飼育費用として使うわけです。全て遺言で可能です。

ペットを知人に引き取ってもらうにしろ家族が飼育を続けるにしろ、一定額のペット用のお金があった方が安心です。そのお金がきちんとペットの引き取り手に渡るかどうかが心配な場合は遺言執行人をつけたり、ペットのことを相談した上で公証役場で公正証書遺言という形式で遺言を作成することをお勧めします。

ただし、注意点があります。遺言を作成すれば遺産分割の際に遺言の内容が最優先となりますし、遺言執行人をつけておけば遺言執行人が諸手続きをしてくれます。しかし、遺言で「20万円を渡します。この子の今後をお願いします」と指定したとしても、引き取り手には「20万円分の義務」しかありません。

保険料は年間4万円で、フード代が年間3万円、予防接種代が1万円……こんなふうにペットのためにお金がどんどん必要になって、そのペットが病気になって数十万の病院代がかかっても、いただいたもの以上の義務はありません。この点はきっちり覚えておく必要があります。

また、遺言でペットを託したといっても、託された側の善意や好意が極めて重要な問題であることも覚えておく必要があります。財産だけもらってペットは放置されることもあります。放棄が可能なことも忘れてはいけません。ペットの飼育のための遺産が多すぎるのではと、トラブルになることだってあり得ます。遺言で指定する前に、引き取り手や相続人の人間性を見極めておかなければいけないと思われます。

遺言でペットの将来をフォローすることはできますが限界があります。ですから、遺言は他の方法と併用することが望ましいと言えます。

信託をする

ペット信託とは、日本の法律の専門家の主導によって生まれ、2013年に商標登録されたばかりのサービスです。生前に相続財産からペットのためのお金を切り離して信託し、死後にペットの世話を引き受けてくれる人も含めて「この子の世話をお願いしますね」「このお金をペットに使ってくださいね」という契約を結びます。

遺言の場合、ペットの面倒を見てほしいと指定しても、どうしても遺産だけもらってペットは放置という問題がありました。また、もらったもの以上の義務は課されないという問題や相続トラブルに発展する可能性もありました。その後の面で遺言はペットの引き取り手の好意や人間性に左右されるところが大きく、監視がありません。

その点、信託でしたら、きちんとペットの世話をしているかどうかという監視もありますし、信託したお金は相続財産ではないのでトラブルが起き難いということと、きちんとペットのために使われるというメリットがあります。

遺言の場合は、どうしても相続財産からペットの分として誰かに託すという方法しかありませんが、信託の場合はあらかじめ相続財産から切り離されますので、そもそも相続の対象にはなりません。契約を結びお金を信託した時点でペットの取り分は保証されると言えます。

また、フードのことやペットの持病のこと、ペットの老後の世話まで細かく指定できるという魅力があります。契約には法律家が介在し、信託財産と、ペットの世話をする人と、信託の内容を、飼い主の意に沿う形できちんと書類化した上で契約します。もちろん、周囲の人(家族、相続人、友人や知人)に頼む場合も信託は使えますし、誰も頼む人がいない場合も信託によりペットのことをお願いすることは可能です。近年登場したサービスですが、法律家が主導で行い普及が進んでいます。

遺言は、相続人の中で同居していて同じくペットを可愛がってくれていた人や、絶対にこの人なら大丈夫という人に託す場合、また、相続トラブルが起きないと確信している場合や、面倒を看てくれる人に少しでも多く相続財産を受け取ってもらいたいという時に有効な手段です。信託は、飼い主の死後のペットの生活や将来を守るサービスであると言えます。



死後のペットの生活を考える

家族に託す

家族がペットをそのまま可愛がってくれればいいのですが、ペットが亡くなった人にしか懐いていなかったり、家族に健康上の問題があったりした場合はなかなか難しいかもしれません。家族みんなで可愛がっているという人は特に自分の死後のペットのことは心配ないでしょうが、全ての家庭がそうとは限りません。

ペットを飼うことには金銭的、時間的、体力的な負担が必ずあります。家でそのまま飼うという場合もペットの衣食住は続くわけですから、何らかの対策をしておいて損はありません。例えば同居家族以外の人が相続人になっている場合は、ペットのこと、家族のことを考えて、遺言で相続財産を同居家族に渡すよう書き記すですとか、ペット信託であらかじめお金をプールし負担を軽くするですとか、家族で飼うにしても、相続財産の行く先や援助を考えておくとペットや家族の生活の安定に繋がります。

死後に家で飼えなくなる場合は、せめて新しい引き取り手が見つかるまでの間の飼育のお願いと、引き渡しや手続きのお願い、そしてペットの情報を一カ所にまとめておき、伝達がしやすいようにしておきましょう。それだけでもスムーズさはかなり変わるはずです。

知人に託す

死後に知人や友人に引き取り手がいれば有り難いことです。この場合、普段雑談程度で「私が死んだらお願いね」「いいよ」とやり取りしていたからといって死後いきなり遺言でお願いするのも困りものです。雑談だから軽く相槌を打っていたということだってあるはずですから、あらかじめ真面目な話として自分のペットのことをお願いしておく必要があります。

相手もペットを飼っているなら、先に死んだ方のペットを相互に引き取るという約束でもいいかもしれません。ペットを飼っている人は同じことで不安を抱いているケースが少なくありませんので、相互扶助の一環として友人とお互いのペットのことを話した上でお願いできるならそれも良い方法だと思います。友人知人の家に先住猫、先住犬がいて、自分のペットとの相性も悪くない、そして友人や知人が信頼できる人ならペットを可愛がっている家族が飼育を続けるのと同様に素晴らしいことだと思います。

知人や友人が引き取りをOKしてくれる場合は、やはり家族がそのまま飼育する場合同様に金銭的な負担を考えなければいけません。遺言を活用しペットのために積み立てていたお金を渡す、相続財産の一部の受け取りを指定する、信託を活用するといった方法を併用するのが良いでしょう。

病院やブリーダーに情報をもらう

動物病院や犬舎、ブリーダーなどでは迷子犬や迷子猫、捨て猫や捨て犬、主人を亡くした犬猫の情報を善意で収集し、次の飼い主探しを積極的に行っているところもあります。動物と近しく接している仕事だからこそ、こういったところには自然と情報が集まってきますし、獣医さんや、犬舎を経営している方はかなりの情報通です。

自分が死んだ後のペットが心配で。そんなふうに相談すれば、自分の地域で動物を預かってくれる施設や方法、過去の事例や里親制度などを教えてくれる場合があります。また、好意で新しい飼い主を紹介してくれることもあります。行きつけの動物病院や、ペットの実家(ブリーダー)に相談してみるのも一つの手です。

他のペットの飼い主にきいてみる

犬の散歩をしていると、公園に同じく犬の散歩に来ている飼い主さんと挨拶を交わしたりしないでしょうか。実は、飼い主ネットワークは侮れないものがあります。病院の評判からフードの評判、保険の評判など、犬の散歩に来ている飼い主さん同士は情報交換をしていることがけっこうあります。

散歩で挨拶を交わし、少しでも話すようになったら、思い切って色々聞いてみるのも手です。飼い主ネットワークで「ある方が新しいわんちゃんを飼いたいって探していて」「あそこのおうちはご主人が亡くなってわんちゃんを飼えなくなった時にこんなふうにしたそうよ」「あの方は犬も猫も大好きで、前にもご主人を亡くしたわんちゃんを引き取ってね」なんて話を聞くこともあるはずです。

また、長くペットを飼っている飼い主さんはその地方の里親制度や、積極的に新しい飼い主を捜してくれる動物病院やブリーダーの情報を知っていることも多いです。気になることがあったら積極的にきいてみれば、同じ動物を飼っている者同士として耳より情報を教えてくれるはず。

動物を飼っている人は同じようなことを気にしていることが多いです。自分が死んでしまったら?犬猫のための制度は?病気の場合は?保険は?と、色々な情報を交換しています。思わぬ情報をもらって、物事がとんとん拍子に良い方に決まるということもあります。飼い主ネットワークは活用するのがお勧めです。

ホームを検討する

現在、犬や猫の高齢化や事情で飼えなくなった場合に預かってもらう方法としてニーズが高い老犬・老猫介護ホーム。犬や猫の介護ホームは基本的に齢を取った犬や猫が対象です。ペットの年齢によっては検討が必要です。

自分が死んだら引き取っていただくという形で対応可能かの他に、家族がペットの飼育を引き継ぐとして、老齢になった時のことも考えておく必要があります。ペットは歳を取るとその分病気になるリスクも高くなりますし、世話も総じて大変になります。そのことも考えて遺産を残すこと、預け先をあらかじめ探しておくこともペットのためではないでしょうか。

ペットがある程度の年齢で家族に託す場合でも、家で飼ってもらうのではなく相続財産から幾らかペットの飼育費用にと残しておいたり、信託を活用することで、ペット介護ホームに費用を入れてもらう形で犬や猫の今後をお願いすることもできます。

ペットの介護ホームの中には動物の専門家が専属でついているところも多いです。自分が安心して託せる場所を生前から探しておき、いざという時のために早め早めに連絡を取って、疑問部分や手続きについて確認しておくことが必要です。

他にもペットのためにできること

どんな対策をとるにしてもペットに関する情報を一つ所にまとめ、残しておくことが必要です。飼い主さんを亡くした新しいペットを迎える場合、情報がないと大変です。

■鑑札(番号や登録のこと)
■通院歴、病歴
■予防接種歴、予防接種証明
■食べ物のこと(好き嫌い、アレルギー)
■加入している場合はペット保険関係の書類
■血統書(ない場合は年齢に関する情報)
■かかりつけの動物病院の情報など

情報があれば、ペットを引き受ける新しい飼い主はとても助かります。
同居の家族がそのまま飼育する場合でも、主として世話をしていた人以外は細かい情報を把握していない場合があります。手帳や便箋などに必要な情報をしっかりと書き残し、血統書や保険証書、鑑札や予防接種証明は一カ所にまとめておくようにしましょう。

また、ペットが特殊な動物の場合、診察できる動物病院が限られる場合があります。動物病院も、犬猫と兎はOKだけれどフェレットなどは専門外という場合もあります。なるべくかかりつけの病院の情報もしっかりと残しておくようにしてください。持病がある場合も、新しい飼い主に情報が伝わらないとペットの命に関わります。しっかりと情報を残すようにしましょう。

情報をしっかり伝えることは、ペットの幸せに繋がります。

まとめ

どれだけペットを可愛がっていたとしても、主人が亡くなってしまえばペットの明日の保証はありません。家族がいるから家族がそのまま見てくれるという絶対に保証があればまだ安心なのですが、家族にも体調の問題があったり、ペットとの相性があったりと、主人が亡くなった場合そのまま飼い続けることが難しい御宅もあるはずです。

家族のようも思っていても、ペットには相続権はありません。相続財産は人間を通して所持するしかないのが現状です。ですが、自分が死んでしまってからでは何もできません。相続人や親族が好意、善意でペットの今後を考えてくれることを期待するしかありません。

そこで期待できるのが信託です。信託財産は相続財産から切り離されるという特徴がありますので、相続人に相続されることはありません。純然たるペットのためのお金として使用されますし、ペットの飼育やお金の使途に関して監視が働きます。信託を使ったから遺言が使えないということはありませんので、足りない部分を補うように遺言を使うのがベストではないでしょうか。

自分が死んだらうちの猫は?犬は?どうなるの?

そんなふうに不安に思うなら、できる限り自分の死後を考えて、ペットの生活のために動くことが必要です。絶対という方法はありませんが、準備をすればその分ペットの生活は安心な方向へ向かうはずです。

現在の許されうる限りの手段を駆使することにより、死後のペットを守ってあげる何かの方法があるはずです。まずは情報収集と、ペットの情報をまとめておくこと。できることから始めてみませんか? ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。