贈与税の税率って高い?結婚や子育てに最適な非課税贈与の活用術

贈与税の軽減税率が平成27年度改正で導入され、親からの贈与を受けやすくなりました。さらに教育だけでなく、結婚や妊娠、出産や子育てのためにもらったお金についても大きな非課税枠ができたのです!贈与税の計算方法から非課税の特例まで、まるっと解説します。



贈与税はもらった人が納付

贈与税は個人からもらった財産に対して課せられる税金です。日本においては贈与を受けた人が払うことになっているため、受贈税と呼ばれることもあります。受贈者は1年間に贈与を受けた財産について、翌年の2月1日から3月15日の間に申告しなければなりません。

贈与にはさまざまな形があり、例えば以下のようなケースも贈与税の対象です。

・車の名義変更
・保険料を支払っていない生命保険金を受け取った場合
・評価額よりも著しく低い価額で譲り受けた場合

また、夫婦間での贈与も課税の対象です。ただし婚姻期間が20年を過ぎた夫婦が居住用財産の贈与を行なった場合には2,000万円の配偶者控除を受けることができます。この控除は同じ配偶者からの贈与に対して一生に一度しか使えませんが、相続税対策で利用されることの多い制度です。

贈与税がかからない財産もあります。例えば生活費や教育費がその筆頭で、法律によって贈与税をかけないと決まっているのです。

さらに平成25年度税制改正及び平成27年度税制改正により、結婚や出産育児、教育や住宅などの金額の大きなイベントに対して制度が整備拡充されました。この機会に活用を検討してみるのもよいかもしれませんね。

贈与と税金|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

資産課税—平成25年度税制改正 : 財務省
参照元:財務省(2015年11月、著者調べ)

相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)|パンフレット・手引き|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)



贈与税の税率っていくら?

魅惑の110万円控除!

贈与税には110万円の基礎控除額があります。そのため贈与を受けた財産が年間110万円以内であれば税金がかかりません。税額の計算ではまず110万円を差し引き、その後の金額(課税価格と呼びます)に税率をかけて、最後に控除額を引きます。式で表わすと以下の通りです。

贈与税=(贈与を受けた財産の総額-110万円)×税率-控除額

ただしこの基礎控除額は、受贈者ごとに年間110万円です。1年の間に複数人から贈与を受けても基礎控除額は110万円のままですので注意してください。

No.4410 複数の人から贈与を受けたとき(暦年課税)|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

贈与税の税率は2パターン

贈与を受けた財産は、一般贈与財産と特例贈与財産の2種類に分類されます。特例贈与財産とは、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の人が祖父母や父母などから贈与された財産のことで、課せられる税率は特例税率と呼ばれます。

そして特例贈与財産に当てはまらない財産を一般贈与財産と呼び、一般税率が課せられます。課税価格別の税率と控除額は以下の通りです。

■一般贈与財産の税率と控除額
・200万円以下:10%/ナシ
・300万円以下:15%/10万円
・400万円以下:20%/25万円
・600万円以下:30%/65万円
・1,000万円以下:40%/125万円
・1,500万円以下:45%/175万円
・3,000万円以下:50%/250万円
・3,500万円超:55%/400万円

■特例贈与財産の税率と控除額
・200万円以下:10%/ナシ
・400万円以下:15%/10万円
・600万円以下:20%/30万円
・1,000万円以下:30%/90万円
・1,500万円以下:40%/190万円
・3,000万円以下:45%/265万円
・4,500万円以下:50%/415万円
・4,500万円超:55%/640万円

特例贈与財産の軽減税率は平成27年度の改正で導入されました。それによって上の世代から下の世代への贈与をうながし、消費を拡大させようとしているわけですね。

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

実際に計算してみましょう

両方の贈与財産があるケースを考えてみましょう。例えば25歳の女性が母親から300万円(特定贈与財産)、姑から200万円(一般贈与財産)を贈与されたとします。

まず両方とも一般贈与財産とします。合計額500万円から基礎控除額110万円を差し引いた課税価格390万円に、一般税率15%をかけて10万円を控除します。その税額48.5万円に「一般贈与財産/全財産」をかけることで一般贈与財産分の税額を求めます。同様にして特定贈与財産分の税額を求めて合算した金額が税額です。

1.一般贈与財産と仮定:(500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円
2.一般贈与財産分の税額:48.5万円×200万円÷500万円=19.4万円
3.特例贈与財産と仮定:(500万円-110万円)×10%=39万円
4.特例贈与財産分の税額:39万円×300万円÷500万円=23.4万円
5.贈与税額:19.4万円+23.4万円=42.8万円

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

非課税の特例を賢く活用!

直系尊属って誰のこと?

贈与税でよく出てくる「直系尊属」とは、ひと言でいえば父母や祖父母のことです。

血のつながりのある親族を血族(養子と養父母、およびその血族も含む)といい、そのうち縦に一直線につながっている系統のことを直系と呼びます。先祖からまっすぐ降りてきて自分を通り、そのまま下に伸びていくラインをイメージしてください。対して伯父や叔母、兄弟姉妹や甥姪を傍系と呼びます。

そして尊属とは自分よりも前の世代という意味で、父母や祖父母などを差します。反対に子や孫など自分よりも後の世代は卑属といいます。

住宅取得等資金の非課税

30歳のAさんは念願だったマンションを買いました。費用は3,000万円でしたが、うち1,200万円を親が出してくれました。さて贈与税はどうなるでしょう?

20歳以上の人が住宅の取得等(購入もしくは新築や増改築)のために直系尊属に資金を援助してもらった場合、一定の条件を満たしていれば受け取った資金のうち一定額までは贈与税がかかりません。これを「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」と言います。

非課税枠は以下の通りで、省エネや耐震等で一定基準以上の住宅を取得等した場合は500万円増枠されます。

■消費税8%で取得等
・平成27年12月まで:1,000万円
・平成29年9月まで:700万円
・平成30年9月まで:5000万円
・平成31年6月まで:300万円

■消費税10%で取得等
・平成29年9月まで:2,500万円
・平成30年9月まで:1,000万円
・平成31年6月まで:700万円

仮にAさんが平成27年4月に1,200万円もらったとすると非課税枠は1,000万円なので、基礎控除額110万円と合わせて1,110万円が非課税になります。税金は残りの90万円に特例税率10%を適用して9万円です。

また残額1,800万円についてローンを組むと、その部分については住宅借入金等特別控除(通称、住宅ローン控除)を使えます。

No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|所得税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

教育資金の非課税

2歳の子供を持つBさんは、90歳の曽祖父からその子に対して教育資金を贈与したいと提案されました。この贈与が非課税になるには、どのような条件があるのでしょうか?

平成25年4月1日以降に30歳未満の人が、金融機関等との一定の契約にもとづいて直系尊属から教育資金を贈与された場合、1,500万円までなら贈与税が非課税になります。これを「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例」といいます。

この特例を受けるには教育資金口座を開設し、金融機関等を通じて非課税の申告書を税務署に提出しなければなりません。そして金融機関等に領収書等を提出して認められれば、資金を引き出すことができます。例えば以下のような費用に対して、口座から払い戻しを受けることができます。

■学校等に直接支払う費用
・入園料、保育料
・入学試験の検定料、入学金、授業料
・学用品の購入費
・修学旅行費
・学校給食費

■学校等以外に直接支払う費用(500万円が限度)
・学習塾やそろばん教室などの月謝と用品購入代
・水泳や野球などの指導料と用品購入代
・ピアノや絵画などの指導料と用品購入代
・通学定期券代
・留学渡航費
・入学や転編入での転居で発生した交通費

ただし教育費は、支払いが発生するたびの贈与であればもともと非課税です。この特例は年老いた祖父母などが孫やひ孫へ一括贈与するケースであれば、有効活用できるのではないでしょうか。

ところで受贈者が30歳に達すると、残高に贈与税が課せられます。冒頭の例だと、Bさんの子供は曽祖父から1,500万円までなら非課税で贈与を受けることができ、その子が30歳になったときの残金については贈与税を納付します

No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置:文部科学省
参照元:文部科学省(2015年11月、著者調べ)

結婚子育て資金の非課税

このたびめでたく結婚することになった25歳のCさんは、両親から結婚生活の足しにしなさいと1,000万円をもらいました。このお金はこのままもらっても大丈夫なのでしょうか?

平成27年4月1日以降に20歳以上50歳未満の人が、金融機関等との一定の契約にもとづいて直系尊属から結婚子育て資金を贈与された場合、1,000万円までなら贈与税が非課税になります。これを「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例」といいます。

この特例もまた資金の管理は金融機関等に委託することになりますので、教育資金の非課税の特例と同様の手続きを金融機関等で行なう必要があります。Cさんは親から直接もらうのではなく、金融機関等に専用口座を作って管理契約を締結しなければなりません。該当する費用は以下のとおりです。

■結婚費用(300万円が限度)
・挙式と結婚披露宴の開催費用(結婚指輪や新婚旅行はダメ)
・新居の家賃と敷金礼金等(契約日より3年間のみ)
・引越し費用(不要品処分費や配偶者の転居費用はダメ)

■妊娠出産及び育児
・不妊治療や検診にかかる費用
・分娩費用や産後のケア代
・小学校就学前の子にかかる医療費と保育代

ところで資金管理契約が終了するまでに贈与者が死亡した場合や、契約終了時点で資金が残った場合は、それぞれ相続税と贈与税が課せられます。

No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 – 子ども・子育て本部 – 内閣府
参照元:内閣府(2015年11月、著者調べ)

税額ゼロでも申告は必要!

上記のような非課税の特例を受ける場合、特例を適用して税額がゼロになっていたとしても申告は必要です。というよりも、非課税の特例を受けますよと申告しなければ特例の適用はできません。



贈与税と相続税の深い関係

贈与税は相続税の補完税

生前贈与による相続税の租税回避を防止する目的で、贈与税は導入されました。贈与税がなければ、生前贈与によって相続税をゼロできてしまいます。相続税法の中で贈与税が規定されているのはそのためです。

相続税の申告においては、相続人への相続発生前3年以内の贈与については相続財産としてあつかい、算出した税金から納付済みの贈与税を差し引いて相続税を求めます。

No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|相続税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税とは、60歳以上の父母か祖父母から20歳以上の推定相続人である子か孫への贈与において選択すると、2,500円万円までなら種類や回数を問わず非課税とする制度です。ただし名前の通り、相続が発生したときには精算して相続税が課せられます。

一度この制度を選択すると、以後すべての贈与が相続時精算課税の対象となって基礎控除額110万円が使えなくなります。年をまたいでもリセットされないため、110万円以内の贈与であっても申告しなければなりません。そして2,500万円を超えた部分については一律20%の税金が課せられます。

この制度の本質は相続対策にあり、値上がりが見込める物件や収益物件を贈与すれば、値上がり分や収益分の相続税を回避できます。また遺産分割の対象にならないため、争族対策にもつながります。

No.4103 相続時精算課税の選択|贈与税|国税庁
参照元:国税庁(2015年11月、著者調べ)

時効はあるの?

贈与税は6年、相続税は5年、偽りや不正行為があった場合はともに7年で時効になります。

ただし「贈与の否認」には時効がありません。例えば相続税の調査で過去の贈与が否認されると、時効とは関係なく贈与自体がなかったこととされ、相続税だけでなく延滞税や加算税が課せられます。その代表例が名義預金(名義を借りて実質的には自分が所有している預金)です。

相続税法 第36条
参照元:e-Gov(2015年11月、著者調べ)

国税通則法 第70条及び第73条
参照元:e-Gov(2015年11月、著者調べ)

預貯金 | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所
参照元:国税不服審判所(2015年11月、著者調べ) 本記事の情報は、一般的または筆者個人の調査によるものです。法令などの改正、前提事実や個人状況の違いや変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。