年金の受給年齢が繰上げられるってホント?誰でもわかる簡単解説

65歳からお金がもらえるというイメージの年金ですが、実はいろいろと知られていない制度がたくさんあります。老後に必要な生活費がどれぐらいかかるかなどご紹介しながら、年金の繰り上げについてわかりやすく解説します。



老後のお金貯めてますか?

老後に必要な生活費

「年金や、老後なんてまだまだ先のことだし…」と思っていたり、「今は子育てでいっぱいいっぱいなんです」という方も多いのではないでしょうか。しかし、将来必ずかかってくるであろう費用を知っておくということは非常に大切なことです。まずは、老後に必要な生活費を確認しておきましょう。

夫婦二人で老後に必要なお金の額としてあげられるのが提示される額としては、最低限の生活を行う場合で【22万円】、余裕のある生活をしたい場合は【35万円】といわれています。20代の平均月収が22万円といわれているので、働かなくとも20代の頃の給料が毎月必要となってきます。「孫にプレゼントを買ってあげたい」、「夫婦で年に1度旅行がしたい」など日常に少しでもプラスの出費があることを考えると22万ではなかなか生活できないのが現実です。

「生活保障に関する調査」|公益財団法人 生命保険文化センター
参照元:生命保険文化センター (2015年11月 著者調べ)

老後に必要なお金ってそんなにいるの⁈

なんと、老後にいる生活費用の総額は1億円と言われているそうです。著者もこんなにもかかるとは思っていなかったので驚愕しました。生涯年収の平均が約2億円であることから考えれば、1億円を準備するのがどれだけ大変か容易に想像できます。その計算方法は以下のようです。

定年後(60歳)から考えて、25年間夫婦2人で余裕をもった生活(35万円)を行った場合。
◆35万円×12ヵ月×25年=1億500万円
この様になるためです。

もちろん年金の受給などもあるのでこれを丸ごと貯めておく必要はありません。公的年金以外に必要な老後の資金は平均して3,000万円とも言われています。これらの目安は今後のライフプランを考える上で知っておくといいでしょう。

また、基本的には年金は65歳からの受給のため一般的な定年する年齢の60歳から考えると、5年間の無収入期間ができてしまいます。現代の60代前半と言えばまだまだアクティブに動きたいと思い方がたくさんいると思います。時間もあり、活動する元気もあるこの時期の生活費はかなり不安なところではないでしょうか。

平均年収/生涯賃金(100職種別) 2014年版 |転職ならDODA(デューダ)
2014年版サラリーマンの平均年収/生涯賃金を、約16万人の年収データから算出。100職種別、79業種別、47都道府県別、22歳~59歳年齢別に、平均年収、年収分布、生涯賃金をご紹介します。



年金が繰り上げできるって⁈

貯めておくつもりだったのだけど…

先程ご紹介した、老後の費用を考えれば多くの方が今日からでも少しずつ貯めておいた方がいいのではないかと考えるでしょう。しかし、どうしても定年(60際)から年金受給(65際)までの5年間、お金が全く入ってこなくなるとなると生活が苦しくなってしまう場合もあることでしょう。

例えば先程の老後にかかる生活費としてあげた最低限の生活費の【22万円】で考えてみても、1年間で264万円必要です。これが5年続くとなると、1320万円は必要でしょう。

例えば高齢出産などで子どもがまだ学生であったり、夫との年の差がかなりあるため自分の年齢から考えれば早い段階で夫が定年を迎えてしまったなど、現実ではなかなか貯められないといった場合もでてくることでしょう。実際に老後のお金が貯められていないといった相談などがインターネット上を含め、メディアなどで多く取り上げられています。65歳になるまでの生活費はどうすればいいのでしょうか。

早くからもらえる!

こういった上記のような場合の救済措置として、この【年金の繰り上げ】があります。通常は年金は65歳からの受給開始と決められています。(年齢によっては開始時期が違う場合がありますが、ここでは基本65歳とさせてください。)しかし、この65歳からもらうよりも先に年金をもらうことのできる繰り上げ受給のことです。60歳から64歳までの間に年金の受給を始めることができます。

およそ23%の方がこの繰り上げの受給を行っているようです。
この制度があれば、万が一退職後から年金受給の65歳までに生活費に不安が出た場合でも年金が入ってくるので安心の制度ですね。

いくらもらえるのだろう。

年金の基本

会社員の場合年金の制度としては、【国民年金(基礎年金)】と【厚生年金】をかけていることになります。これは基本的には給料からの天引きで支払いを済ましている年金です。

【国民年金】は現在、老齢基礎年金として【780,100円】が受給されています。(平成27年度現在)
これは、25年以上の受給資格期間があることや、免除期間などが一切ない場合の金額です。免除などの期間があればこの金額から減額される場合があります。

【厚生年金】は報酬比例といって、その人の報酬によって納めている年金額も違うので、もらえる年金額も人によって大きく違います。また厚生年金は65歳から受給する場合は加入期間が1カ月以上あればもらえるので、結婚を機に仕事を辞めてしまった女性のような短い期間で会社に勤めていて加入していた場合でも多少はもらえるかもしれません。

年金を受け取る例としては、勤続40年の平均年収の会社員が定年後年金を受け取るとした場合、国民年金と厚生年金を合わせて月額で約23万円もらえ、年間では276万円がもらえることになります。
会社員の場合はこの二つの年金制度を基本として受給できるということを確認しておきましょう。

平成22年度の年金額について |報道発表資料|厚生労働省
参照元:厚生労働省 (2015年11月 著者調べ)

年金は繰り上げて、長生きがお得⁈

「だったら早いとこ繰り上げて、しっかりと長生きすればそれだけお得だわ。」とか、「怪しい…なんかものすごい条件があるのではないか…」といろいろなことを思われているのではないでしょうか。
残念ながら、前者の【繰り上げて長生きがお得説】とは少し違います。

では、繰り上げはどのように行われるのでしょうか。先程、基本的な年金の仕組みを簡単にご紹介しましたが、年金の繰り上げを行った場合25年間しっかりと国民年金を納めていても、同額の年金を受け取ることはできません。以下のような式で減額率が決まり、年金が減額されます。

【繰り上げる月数×0.5%】

これが、減額率になります。つまり月単位で減額がされます。例えば、65歳の受給開始日の1ヵ月前にどうしても、年金を受け取りたいと思った場合は、0.5%の減額で済みますが、60歳からすぐに年金の受け取りを始めたい場合は、60ヵ月×0.5%=30%でなんと3割もの年金が減額されてしまいます。

この場合に注意したいのがこの減額が生涯続いていくということです。前倒しで受け取ったものだけでなく、毎月入ってくる年金の金額の一生を左右されてしまいます。安易に定年後すぐに受け取ってしまうとかなりの損をしてしまう場合もあるでしょう。

老齢基礎年金の繰上げ受給|日本年金機構
参照元:日本年金機構 (2015年11月 著者調べ)

比べてみました…

「年金を損得で、考えてはいけない。考えてはいけない…」そう頭の片隅から聞こえてきたのですが、著者の悪いクセが出てしまい、どうしても気になってしまいました。その為、繰り上げ年金をした場合同じ額をもらおうと思ったらどれだけ受給の期間が追加で必要か計算をしてみました。

ここで使う数字は、上記の例であげた厚生年金で受け取れる年金額の月23万円で考えてみます。会社員の夫がもらえる年金額として挙げた数値ですので、基本的な受給開始年齢の65歳から男性の平均寿命の80歳まで15年間もらえるものをベースとして考えます。

【受給開始:65歳(基本)】
受給総額=月額23万円×12ヵ月×15年間=4,140万円

【受給開始:63歳(減税率12%)】
受給総額=月額23万円×12ヵ月×15年間×12%=約3,643万円
4,140万円(基本)ー約3,643万円=497万円の損をする
ここから考えると、通常の受給年齢から受け取っている人よりも21ヵ月(2年弱)長く受給する必要があります。

【受給開始:60歳(減額率30%)】
受給総額=月額23万円×12ヵ月×15年間×30%=2,898万円
4,140万円(基本)ー2,898万円=1,242万円の損をする
ここから計算をすると、通常の受給開始している人よりも4年半ほど長く受給する必要があります。

こうやって、例をあげて計算してみると、平均寿命から考えて、前倒しした分だけ年金額が減ってしまうということがわかりました。仮に最後にあげた例のように、繰り上げ可能な60歳から年金を受け取った場合に平均して人よりも多くもらいたいと思ったら、最低でも5年以上、10年程は長生きする必要がありますね。健康に自信のある方はぜひ…。

平成26 年簡易生命表の概況
参照元:厚生労働省 (2015年11月 著者調べ)

注意しておきたいこと

減額以外にもさまざまな条件があります。重要なところを少しご紹介します。

◆厚生年金を繰り上げる場合、国民年金と同時に繰り上げを行わなければいけない
◆手続き後受給権が発生したら、変更や取り消しなどができない
◆障害基礎年金を受け取ったりすることができなくなる
◆寡婦年金を受け取れなくなる(夫が亡くなった場合に妻が受け取ることができる年金)

少し上げただけでもこの様な条件があります。自分自身にどの様なデメリットがあるかを確認することをおすすめします。

寡婦年金を受けられるとき|日本年金機構



年金繰り上げのメリットとデメリット

メリット

年金繰り上げを行うのメリットとしては、以下のようなものがあるでしょう。

◆早いうちから年金がもらえる
◆長生きをすれば、人よりも長い期間の年金を受け取ることになる
◆退職後の5年間の生活費の貯めておく金額が少なくて済む

メリットを考えた場合には、やはり一番に上がってくるのは【早くもらえる】ということでしょう。しかし、このメリットはやはり万が一の応急処置的な制度に過ぎないと著者は考えます。なぜなら、二つ目のメリットの長生きをすればたくさん受け取れるといったものは自分で気を付けてどうにかなるものではありません。健康管理をしっかりしていても病気になる方もいれば、なにもしていない方でも100歳近くまで長生きされる方もいます。

つまり年金の繰り上げのメリットには少しギャンブル性を感じます。

デメリット

では次にデメリットをあげてみましょう。

◆年金の減額が一生涯続いてしまう
◆他の障害年金など受け取れなくなるものがある
◆長生きをしなければ損をする可能性がある

こちらのデメリットで考えて一番気になるところは、年金の減額が一生涯続いてしまうといってところではないでしょうか。この記事を読んでくださっている方のほとんどは会社で毎月年金を天引きされているのではないでしょうか。著者は「この毎月の年金の天引きが引かれなかったらお給料もっとあるのにな」と思ったことがあります。毎月、給料からそれなりの負担をして納めている年金だからこそ、お得にとまでは言わなくてももらえるものはきっちりともらいたいですよね。

また、ある意味生命保険や健康保険のように、に万が一のことがあった場合に受給出来る年金がもらえなくなるのは非常に心配な点です。これらのデメリットから考えても年金の繰り上げ制度は積極的に利用をすすめるものではないなと感じました。

まとめ

この年金の繰り上げ制度を考えていくと老後の資金というものはかなり深い問題だと感じました。自分自身が年金を受給する年齢になった時にどの様な生活をしているか見当がつかない人の方が多いのではないでしょうか。

例えば、子どもは一緒に住んでいるのか、持ち家にそのまま住んでいるのか、家の改修工事が必要かもしれない、健康な状態でその年齢を迎えられているのか…考え始めると、不安なことしか思い浮かばなくなってしまいます。この例のように、老後の資金や年金はいつからどの様に使うのか、そしてその金額がいつまでいるのかそれは現段階ではわかることではありません。

しかし、この年金の繰り上げの制度から一つわかることは、【貯えは必ず必要】ということでしょう。先ほど、繰り上げ制度はある種ギャンブルであるかのようなたとえをあえてしましたが、【万が一】ということまで国の制度に頼っていてはたいへん危険です。

65歳という年齢がまだまだ遠い方、もうすぐな方と様々だとは思いますが、どのタイミングでも老後を苦しむのではなく、楽しい生活ができるよう少し気にかけてみる必要があるように思いました。こういった制度を知ることから、夫婦としての老後のライフプランを考えてみるといいですね! ※本記事は一般的な情報に過ぎず、適用法令等の改正、前提事実や個人状況の違いおよび変化によって、掲載内容と実際の結果が異なってしまう可能性があります。従って本記事の掲載内容については一切の責任を負いかねますので、内容の解釈や実践はご自身の責任で行い、専門家に相談されることを推奨いたします。